渡良瀬
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渡良瀬
@_ry0_o
雑多垢。17歳。りょーです フォトナとバロやってます @ln_ANARCHY @leiron_team @rozi_89006 @Tokiwafn

◆「86」著者・安里アサト最新作 メインビジュアル解禁◆ ~~~~ いずれも少年、純白をした武官の袍に釼を佩く。革の剣帯、手甲と軍靴に身を固め、夜闇に煌めく髪留めは八重咲きの山吹、――皇室直属の特務機関〈八重山吹〉の花鈿。 直上で降下を止めた金剛の塔を、見据えたまま少年術師の一方が言う。 「踏破儀式を開始。――それじゃあ行くな、天茜(あかね)」 「気をつけろ、碧燈(あおひ)」 ††† かつんと儚く落ちて転がったきらめきに、天茜は歩み寄って拾いあげる。 いかにも子供がつけるようなちゃちなプラスチックの、けれど愛らしい四弁花の髪飾りだ。まだ細い髪をまとめるために金具も小さな、……おそらくはごく幼い子供の。 古代大鮫(メガロドン)の七堕(ナナエ)に喰い殺された、あの幼いおさげの持ち主の。 中央、無惨にひび割れた珠玉がぱきんと砕けて消滅するのに、そっと一つ息を吐いた。 この儀式場に至るまでに古代大鮫が喰らった、数多の人と獣の唯一の名残。七堕が骸を残さないのと同様に、七堕の犠牲者もまた、まともな遺体が残ることはない。 ……形見の一つも、帰ってきたなら遺族にはせめてもの慰めだろうか。 儀式場を封鎖する三重の結界を越えると、その外で警衛についていた衛門府(えもんふ)の衛士たちが、常の儀式とは異なる事態に何事かと振り返った。 近くにいたまだ若い、同い年くらいの少女の衛士が慌てて駆け寄る。 「術師さま。いかがなさいましたか」 臣民禁足範囲の拡大、周辺住民の避難命令。そういう、なにか緊急事態かと緊迫しているのに、そうじゃないと首を横に振ってみせてから髪飾りをさしだす。 「これだけ、回収できたから。……家族を探せるなら渡してやってくれないか」 は、と衛士の娘は息を呑む。 そのために、常にはこの穢れた帝都ではなく清浄なる皇京に住まう八重の術師がそのためだけに、儀式場の結界の外まで出てきたのだと知った。 彼にとっては顔も名前も知らない、下界を這いずる民の死を、たしかに悼んでその家族の心を思いやってくれたのだと。 受け取って強く、衛士の娘はうなずく。ひび割れた髪飾りを壊さぬようにそっと、けれどしっかりと抱きしめた。 「了解しました、たしかにお預かりします。――ありがとうございます」 【キャラクターイラスト:necömi(@necomi_info)】 【世界観イラスト:尾崎伊万里(@sn_ozk)】 ~~~~ 『ヤエブキ機関 千万丈塔踏破録1』 ――絆を以て、3万キロを超える巨塔を攻略し、滅びの宿命から世界を救え。





