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今年のSUMMER SONICに出演予定のフィリピンのガールズグループBINIさんの YouTube 再生回数を 108 か国分分析し、先月のCoachella 出演がファンの視聴行動にどんな変化をもたらしたかを調べました。フィリピンの外側でファンダムが育ち始めている兆候が生まれているかもしれません✍ 【Coachella 前後 で何が変わったか】 上のグラフはフィリピンのみ、下のグラフはその他の107か国の視聴回数で、縦軸は異なるスケールで可視化しています。 3 月初旬(3/1〜3/4)の全世界再生数は平均 34.3 万回/日でした。 4 月 9 日の Blush MV 公開で 113.6 万回に跳ね上がり、翌日の Coachella 初日には 125.5 万回を記録しました。 その後、再生数は緩やかに減少しますが、すべてのイベントが終わった 5 月上旬(4/28〜5/8)でも平均 63.1 万回/日を維持しています。 Coachella 前と比べて +83.8% の底上げが残っており、一過性のブームでは終わらなかった可能性を示唆しています。 【Coachella の効果は?】 Blush MV 公開日(4/9)の 3.1 倍というスパイクは、Coachella 開場前に起きたものです。 初日のインパクトを作ったのは MV であり、Coachella ではなさそうです。 では Coachella は何をもたらしたのでしょうか。 比較対象になるのが、1 か月前に公開された Unang Kilig MV です。 Unang Kilig も公開日に 2.7 倍のスパイクを記録しましたが(注 1)、ピーク後わずか 2 日で勢いが半減しました。 一方、Blush MV + Coachella の組み合わせでは、半減するまでに 11 日かかっています。 Coachella のステージ映像、SNS での拡散、メディア報道が連日続いたことが、ファンの視聴行動を持続させた要因のひとつと考えられます。 加えて、Coachella 直後に公開された Lyric Video 群(Step Back 36 万回、Sugar Rush 34 万回、Tic Tac Toe 27 万回)や Dance Practice(46 万回)、BINI Diaries 全 9 話が、新規リスナーの受け皿となり、関心の減衰をさらに緩やかにした面もありそうです。 データから見る限り、Coachella の効果は「初日の爆発力を生んだこと」よりも、「MV が作ったバズを何日間も持続させたこと」にあったように見えます。 【どの国のファンが定着したか】 Coachella 前後の底上げを国別に見ると、ファンダムの地理的な広がりの手がかりが得られます。 最も定着率が高かったのはインドネシアの +199.5% でした。 インドネシアは以前の当ラボによる分析で、越境ヒットの「起点国」としても上位に現れた国です。 人口の半数以上が 30 歳以下という若い人口構成が、過去のヒット曲を「再発見」する受け皿になっているだけでなく、K-pop の新曲が東南アジアから世界に広がるルートの出発点にもなっていました。 BINI においても、この「若い聴衆が新しいアーティストを受け入れやすい土壌」が、定着率の高さに寄与している可能性がありそうです。 タイ +176.8%、イギリス +151.8%、韓国 +151.0% と続きます。 フィリピンは +76.2% ですが、もともとの母数が圧倒的に大きいため、絶対数では 1 日あたり約 23 万回の底上げに相当します。 定着率の高い国にはひとつの共通点がありそうです。 インドネシア・タイ・韓国はいずれも、Coachella 以前から一定の視聴量があった国です。 これらの国のファンにとって Coachella は「BINI を初めて知る機会」ではなく、「自分が応援していたアーティストが世界的なフェスに出た」という体験だった可能性があります。 その体験がファンとしての定着を後押ししたのかもしれません。 【 Coachella が変え始めた構造】 2026 年 3〜5 月の全世界再生数 3,967 万回のうち、フィリピン 1 か国が 3,405 万回、85.8% を占めています。 BINI の YouTube 再生数は、フィリピンのファンコミュニティがほぼ単独で作り出している状態です。 ただ、Coachella を経てこの構造に変化の兆しが見え始めています。 フィリピン以外の 107 か国の合計再生数は、3 月初旬の 3.9 万回/日から 5 月上旬の 9.5 万回/日へと +143% 増加しました。 フィリピン自体の伸び(+76.2%)を大きく上回るペースです。 85% という数字はまだ圧倒的ですが、フィリピンの外側でファンダムが育ち始めている兆候と読めるかもしれません。 108 か国の YouTube Charts を日次で追うことで見えてきたのは、Coachella が BINI のファンダムにもたらした変化が、一過性のバズではなく、フィリピンの外に広がる持続的なファン層の芽生えだった可能性です。 この芽生えが今後も続くかどうかは、引き続きデータを追う価値のあるテーマかもしれません。 【注記】 分析対象期間は 2026 年 3 月 1 日〜5 月 8 日としています。 注 1:Welch の t 検定(イベント前後 7 日間の平均を比較する統計手法)で p = 0.029。 p 値は「偶然このような差が生じる確率」を表し、一般に 0.05 未満であれば統計的に意味のある差とみなされる。

















