
「中国が意地悪をしてレアアースの輸出許可を引き延ばしている。だから日系企業が困っている」 感情的で局所的な悲鳴だけをクローズアップし、 「なぜ中国がそのカードを今切っているのか」 というグローバルな地政学・産業構造の鳥の目を完全に遮断する。 日本のマスコミは、米国や日本が対中半導体輸出規制や経済安全保障(デカップリング)を強化する際は、自由主義陣営の安全を守るための正当な措置として英雄的に報じる。 しかし、中国側が全く同じロジック、つまり自国の安全保障にリスクをもたらす国に対して、戦略物資の輸出を管理・厳格化するというカードを切った瞬間、マスコミは急にそれを不当な嫌がらせや経済的威圧として描き出す。 中国が輸出許可を出さないのは、日本が半導体製造装置や外交的発言で米国に追従して中国を包囲しようとしていることに対する、同じレベルの経済安全保障法の合法的な執行に過ぎまない。 そしてマスコミは単にレアアースと一括りにするが、中国が今、特に輸出ライセンスを絞っているのは、ガリウムやゲルマニウム、そしてガドリーニウムやネオジムといった次世代の心臓部を構成する特定物質だ。 【日本のミリオタ・スペック厨】 「F-35を爆買いだ!次世代半導体のラピダスに国費を投入だ!」 ⇒ カタログスペック上の強さに熱狂する(劇場型政治の観客) 【中国の鳥の目のアプローチ】 ・F-35の最先端AESA(アクティブ・フェーズドアレイ)レーダーの基盤となるガリウムを絞る ・次世代EVやロボットのモーターに必要な高性能磁石のネオジムを絞る ⇒ インフラの原材料を止めることで、日米が熱狂するハイテクの配管を上流から干上がらせる F-35の整備問題やタングステンガスの消滅と同じく、いくら紙上のスペックが優れていても、それを作るための、あるいは維持するための土台(レアアースやタングステン)を中国に握られているという構造を直視すれば、日米が仕掛けている経済戦がいかに脆弱な基盤の上に成り立っているかが分かる。 日本のマスコミが全体構造を説明しないのは、この勝ち目のない構造的敗北を国民に気づかせないためだ。 中国が日系企業への輸出許可を引き延ばしている最大の理由は、日本の素材メーカーが根を上げて市場から退出するまでの時間を稼ぎ、その隙に中国国内の代替メーカー(国産サプライチェーン)へシェアを完全に移行させることにある。 日本の素材産業(関東電化などの優秀な化学企業)は、中国の原材料を買い、それを日本で超高純度に精製して、世界(サムスンやTSMC)に売ることで利益を得ていた。 中国が原材料の輸出許可をダラダラと遅らせれば、日本のメーカーは顧客への納期を守れず、信用を失う。その間に、中国政府は莫大な資金を自国の精製・ガスメーカーに投入し、原材料から精製、最終製品までを中国国内で完結させる垂直統合を完成させる。 日系企業が「中々許可が出ない」と役所の前でお辞儀を繰り返している間に、日本のお家芸であったハイテク素材産業の既得権益そのものが、物理的に消滅させられている。






