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A新宿東口店:宣材写真用バニーさん(森下 きの・22/元アパレル販売員)の場合
「はい、正面向いてー。顎引いて、そのまま」
シャッターが三連で鳴って、ストロボの残像がまぶたの裏でちかちかする。目を開けても白い壁、白い床、白い光。フロアの薄暗がりなら乳首の輪郭くらいは影に溶けてくれたのに、ここでは蝶ネクタイの下から何も覆われていない胸が、乳輪の色まで余さず照らし出されている。
次の指示が来る前に息を整えるので精一杯だった。
「右手、腰に。左は下ろして——いいね、いいね」
言われるまま右手を腰骨に当てると、カフスの金具がひやりと肌に触れた。指先が自分のハイレグの縁をかすめて、今の自分の輪郭を手のひらで確かめてしまった気がして、指がぴくっと跳ねた。
「きのちゃん、肩の力抜いてー。さっきの困った顔のほうがよかったな」
困った顔。演技じゃない。
「次ねー、椅子に浅く座って、脚組んでみよっか」
白いスツールに腰を下ろした瞬間、太腿の裏に座面が冷たく貼りついた。浅く座ると背筋が伸びて胸が前に出る。脚を組もうとしたら、ハイレグの布が股の付け根にぎゅっと食い込んで、座る角度でこんなに引っ張られ方が変わるのかと思い知らされた。
「いいねその表情! 上目遣いでカメラ見て」
見上げた先に、レンズの黒い穴がある。その奥にわたしの裸身が一ピクセルずつ記録されていく。
「OK! じゃあ次は立って、両手後ろに組んでみよっか。そうそう!」
後ろ手に指を組むと肩甲骨が寄って、胸が前に押し出される。そうなることはわかっている。わかっていて従っている。背中で組んだ指を少しゆるめたら、力が抜けた分だけ胸が自重でやわらかく揺れて、カメラマンさんが「あ、それそれ」と声を上げた。何が「それ」なのかはわたしには見えない。
「ちょっとモニター見てみて」
背中側に回り込んでノートPCの画面を覗き込んだ。
——知らない人がいた。
蝶ネクタイとウサ耳。カフス。それだけを身につけた身体が白い背景の真ん中に立っている。少し眉を下げて、でも目はまっすぐこちらを見ていて、照明のおかげで鎖骨の窪みに光が溜まって、おっぱいのかたちが左右のわずかな差まではっきり写っている。
わたしだった。毎朝、洗面所で見ている人間とはまるで違う。画面の中のわたしは、ただ「きれいに裸を見せている人」として、すでに完成していた。
「これね」
店長がモニターの横からひょいと顔を出した。
「サイトのトップとLINE広告に使うから! あと駅前の柱広告。最高にかわいいバニーさん見せてこ!」
……駅前?
「雑誌にも何媒体か出るし——あ、あと東口の3Dビジョンも押さえてあるからね!」
「ビジョン!? おっぱい丸出しで!?」
言ってから、自分の声のでかさにびっくりした。カメラマンさんがぷっと吹き出している。いや笑い事じゃない。あの巨大な画面に、この——蝶ネクタイの下から何もない、乳首まる出しのわたしが映るということ?
「それって……捕まりませんか? わいせつ何とか罪で……」
「大丈夫大丈夫! 許可とってあるから!」
あの柱巻き広告は改札を出た正面にある。通勤ラッシュの時間帯、何千人があそこを素通りしていく。その視界の端に、後ろ手に指を組んでおっぱいを差し出しているわたしが映る。電車の中でスマホをスクロールする指先に、この乳首が流れてくる。
喉の奥がからからになった。
「じゃ続き撮ろっか。四つん這いいける?」
「え」
「大丈夫大丈夫、顔メインだから。カメラを下から覗き込むかんじで」
大丈夫って言われても——さっきから大丈夫だった瞬間が一秒もない。
でも「無理です」と言うタイミングを逃したまま、膝をついていた。床が冷たい。両手をついて四つん這いになると、重力が全部下に向かって、おっぱいが蝶ネクタイの下でぶらんと垂れた。後ろ側がどうなっているかは自分では見えないけれど、Tバックの布が臀部のあいだに完全に消えていることだけはわかる。
「もうちょいお尻上げてー——そう、顎引いて、上目遣い」
腰を反らせたらおっぱいがさらに下に引っ張られて、先端が床すれすれまで垂れた。空調が胸の下面を撫でる。背中側で布がどこまで食い込んでいるのか、考えたら耳の裏が熱くなった。
シャッター。ストロボ。白。
この姿勢のまま、三十枚は撮られた気がする。途中で腕がぷるぷる震えてきて、それを堪えようとしたら「あ、その必死な感じいいね!」と言われた。
半裸で四つん這いでぷるぷるしているのがいちばん「いい」。笑いたいのか泣きたいのかわからない。しかもこれが3Dビジョンに映るかもしれない。新宿東口の空に、四つん這いのわたしのおっぱいが浮かぶ。正気か。
「ラスト! 立って、正面、笑顔でピース!」
立ち上がるとき太腿の内側が汗で滑った。
ピースを作ろうとした右手の指が、震えている。
ビジョン。柱巻き広告。雑誌。LINE。あの四つん這いのカットも選ばれるかもしれない。通勤途中の誰かが、昼休みにスマホを開いた誰かが、わたしの名前なんか知らないまま、垂れたおっぱいと突き上げたお尻を一瞬だけ見る。
その想像が浮かんだとき、下腹のいちばん奥で、とくん、と脈が打った。
頬が熱い。耳まで熱い。こんなの恥ずかしいに決まってる。決まってるのに、下腹の脈がもう一度打って、今度はゆっくり広がった。
「きのちゃーん、ピースピース!」
「あ、はい」
指を二本立てた。口角を上げようとして、引きつった。今のわたしの顔は見なくてもわかる。困っていて、赤くなっていて、フロアに立っているときとは違う種類の熱が首から耳たぶまで昇っている。
シャッターが切れた。
「おつかれさまー!」
わたしはまだピースを下ろせないでいた。下ろしたら、今日の写真がデータになって、わたしの手が届かない場所に飛んでいく。
帰り道、わざわざ東口を通った。
まだ何も映っていない3Dビジョンを、人混みの中で見上げた。五日後にはここに、あのポーズのわたしが映る。改札を抜けてきた何千人の目に、あの裸が入る。
隣を知らない人が何人も通り過ぎていく。その流れに押されるようにして、わたしも歩き出した。
太腿の内側に、四つん這いのときの汗の跡が、まだ乾ききっていなかった。

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