
震災が起きた「その日」に、現場へ向かう人間がいる。 助けに行く人間じゃない。 空き巣だ。 俺が取り調べた被疑者から直接聞いた。 東北で地震が起きた日 奴はその日のうちに車に乗り込んで現場へ向かった。 避難所へ逃げて誰もいなくなった家を、一軒ずつ狙って回った。 鍵はかかってない。 荷物もそのまま。住民は着の身着のままで逃げてるから。 数日後には「屋根が壊れてますよ」と被災地を回り、不安になった住民から数十万を騙し取る。 奴は笑いながら言った。「あの時期が一番稼げた」と。 腹が立つか。 当然だ。俺も取調室でこれを聞いた時、同じ気持ちだった。 だが、これが現実だ。 災害は人間の本性を両端に引き裂く。 善意の人間が動く横で、まったく同じ速さで、獣も動いてる。 お前はこの現実を知っておいてくれ。 知ってるだけで、お前と家族を守れる確率が上がる。
































