Rayla
25K posts

Rayla
@Rayla_ry
レイラと言います。色んなゲームする二次ヲタ。基本無気力人間で深夜に覚醒します。自分から絡みには行かないタイプなのでドシドシ絡んでください、ズブズブ行きます。
Katılım Ocak 2017
558 Takip Edilen173 Takipçiler
Rayla retweetledi

「……シャーレを辞めるんだ。だって、半年後に死ぬからね」
ケイは固まっていた。
ふたつ。衝撃的な『ふたつ』が明かされて、朝のホームに満ちるは静寂。
バッジを外して、ネクタイを緩めて。病に侵された白い肌、くたびれた男は爽やかに笑う。
「"さようなら"なんだ、ケイ」
春の終わり頃だった。
彼の赴任から一年が経ち、アリスたちも二年生になった──新しい毎日の始まる、透き通るような青空だった。
◇
終わりが来たらなんて言おう。
このキヴォトスに来てから──実のところ、男はずっとそう考えていた。
何故ならば、分かり切っていたから。生まれ持った難病のせいで、自分が"長くない"ことなんて。
「……手は、尽くしたのですか?」
「もちろん。ミレニアムにもトリニティにも、たくさん世話になったさ」
朝の電車に揺られつつ、対照的な二人は言葉を交わす。
三年。『シャーレの先生』となる前から、彼は自分の余命がそれぐらいだと知っていた。
"あのカード"を使いすぎたせいで、それすらも短くなり……もはや半年も生きられない。そう知ったのは、つい数日前のこと。
ケイが記憶を辿ったのなら、確かに彼の顔色は悪いもので。
「シャーレを辞めるってのも、何も思い付きじゃないさ。ずっと決めてたんだよ。死ぬのなら、何も言わずに消えようって」
「ちがう、違うでしょう。それは、それは──」
──『逃げ』だ。
喉元まで出かけた言葉を、ケイは咄嗟に飲み込んでいた。気遣いからではない、気付いたからだ。
単に……今の生徒と先生にとって、それこそが"最善"なのだと。
「……私はどうも、大切な存在になり過ぎたんだ。いま死ぬとなれば──うん、何人かは"後を追ってしまう"だろうね」
ケイにだって分かってしまう、その予測は恐らく現実。
笑ったような、困ったような。曖昧に眉をひそめたまま、男はぽつぽつと零していく。何も言えずに消える、それも混乱を生むだろう。
もしかしたら、自分の影を追ってしまうかもしれないが──。
「──それでも、遥かにマシだろう? 私が思い出になるだけだ」
「……そう、ですね」
少女にしては珍しく、大人の言葉には頷くばかり。
反論など挟めようもなかった。自分の身体のことなど、彼はずっと分かっていたのだろうし──その上で、既に色んな決断を済ませてきた。
ただ、だとしても……どうやら、"それ"だけは分からないこと。
「だから、うん。じゃあね、ケイ」
終わりが来たらなんて言おう。
空港へと続く寂れた列車、もう戻らない片道切符。偶然に巡り合ってしまった二人は、幻のような言葉を探す。伝えるべき何かを探る。
◇
スキップするように歩いていた。
電車に揺られて三十分、次の乗り換えへと続く道。ノイズの走った見知らぬ駅を、男は晴れ渡った眼差しで進んでゆく。
脳裏によぎるは思い出だった。このキヴォトスで過ごしてきた、輝くような記憶だった。
「でも、感謝してるんだ。君たちのおかげで、人生の最期は──」
──とっても楽しいものになった。
そう言い放つ声音は、どこか場違いなぐらいに爽やかなもの。クルーズ船もお祭りも、文化祭も遊園地も──あるいは、鋼鉄大陸の日々だって。
素敵な『学園都市』だった、男はそう笑うけれど。
「……無責任ですよ、貴方は」
ぴたりと立ち止まって、ケイはようやく言葉を見つける。
とっくに分かっていた。振る舞いこそ抜けているものの、『先生』としての彼は本物だった。義務と、責任と、信念と。それらを携えて、『生徒』を導く大人だった。
それを踏まえても、白髪の少女は語気を荒げる。
「すぐに別れると、死ぬと分かっていたのなら。どうして……どうして貴方は、『先生』として来たんですか」
思ってしまう、これ程に残酷なことがあるのかと。
少女は『いつか』を夢見ていた。自分はきっと、その枠からはズレるけれど。アリスやモモイたちが、卒業をして成人もして……そんな『いつか』を、彼と一緒に観守ろうと。
そんな瞬間など、元よりなかったのなら。こんなお別れが来るのなら、こんな気分になるのなら……。
どうして彼は、目の前に現れてしまったのだろうと。
「……ごめんね、ケイ」
終わりが来たらなんて言おう。
ソレはやっぱり分からなかった。更に言うのなら、言うべき"何か"なんてありはしない。
乗り換えの電車は来る、白い肌の二人は乗り込む。空港までは、もうすこし。
◇
本音のひとつとして、男は予想していなかった。
青髪の彼女に、『先生』になってくれと頼まれたとき。ここまで『生徒』に好かれるだなんて、まるで想像していなかった。
サラッと離れられるだろうと、そう思っていた……けれど。
「……もしも。出会ったのがアリスやミドリだったのなら、貴方はどうするつもりだったと?」
「それは、まぁ……」
前髪で目元を隠したまま、隣の少女は棘を刺している。
ただ、男には確かに理由があった。
自分の命は長くない、いずれはきっとすべてがお終い。そう分かっていたからこそ、彼はこの道を選んでいる。晴れ渡った朝の電車、半開きの窓ガラスを言葉が揺らす。
「──死ぬのが怖かったんだ。だから私は『先生』になった」
「……は?」
ちょっと冗談めかしたような、それでいてやっぱり真剣な。
痩せた男が語るのは、彼から見える"世界"の話。遠くなびく雲を見つめて、枯れ木のような足を伸ばして。その声音は、恐ろしいぐらいに淡白なもの。
「まるで価値を感じられなかったんだよ。自分が死んだ後、世界がどうなろうが……うん、全部どうでもいい。だって、私は何も"見られない"のだから」
天国なども信じていないのだ。
自分の死体がどうなろうが、葬式に誰が来ようが──まるで"どうでもいい"と、真顔の彼は語っている。
難しい話ではない、だって自分は"死ぬ"のだから。
それなら、誰が何を想ってくれようが……後に何を残そうが、死の恐怖に比べればちっぽけなもの。
「……変わらないかと思ったんだ。違う世界で、最後にまた『先生』をやれば。この先を未来を生きる子らに、私が何かを遺せたのなら」
結局はエゴだったのだろう、勢いそのまま男は笑う。
巡る日々は楽しかった、祈る未来も本物だった……だけれども、男はきっと変わらなかった。
死が傍にあると分かった瞬間、"一年後"なんて意味を持たない。それこそが、性急なお別れの一因だったのだろう。
「結局、なにも分からなかった。私のぜんぶは、やっぱり無意味なものだった」
「それ、は……」
光のない瞳を見上げて、どうしてもケイは思ってしまう。
もしかすれば──あの鋼鉄大陸、彼に手を差し伸べた『預言者』こそが。空虚な死生観を覆せたのかもしれない、病すらも治せたのかも。
しかし、彼はその手を取らなかった。偽らざる本心のまま、生徒の未来を願って──そうしてそのまま、こうして独りで死んでゆく。
「馬鹿を言わないでください。そんなの、そんなの……あんまりでしょう」
拳をぎゅっと握り締め、少女は言葉を探していた。
三つの駅が過ぎた頃、そんなものなど無いと気付いた。
神は死んだ──自分たちが殺したのだ。
王女に許された奇跡も消え、残されたのは現実だけ。もはや涙も隠さずに、ケイは彼に詰め寄るけれど。
「それなら。せめて死ぬまでの間、やはりこのキヴォトスで──」
「……分かるよ、その方が私だって幸せさ。でも、駄目なんだよ」
死後には何も見出せない。だとしても、生徒のことは大切らしい。
道を戻ることすらも、男はきっぱり拒んでいた。帰りの切符など買いやしない、あのシャーレには戻らない。
『さようなら』も告げないまま、痩せたヒーローは……物語から姿を消して、いつかはみんな忘れてしまう。
「それなら。それ、なら──」
──いっしょに死ぬ。
それすらも、彼にとっては何の意味もないこと。むしろ、やはり最悪の結末となってしまう。それを厭うから、彼は独りきりで空港に向かうのに。
「ごめんね、ケイ。君だから話したけれど……うん、話すべきじゃなかった」
震える指先は抑えきれず、首はどちらにも振れやしない。
終わりが来たとして、言うべき言葉なんて見つからない。ただそれだけが、神の消えた世界の真実。
つい電車は終着点。
空港へと消えゆく彼の背に、少女は永遠みたいに考え込んで──それから、それから。
「それなら──わたしが、覚えています」
どうせなら、哀しくないように。
何にも意味は無いとしても、ケイはぽつりと呟いていた。
物語はもう終わり、台詞は何の意味も持たない。
だとしても、巡り合った生徒は男へと歩み寄る。言うべき言葉を見つけてみせる。
「……ケイ?」
「知っているでしょう? 私もアリスも、人間ではないと。不死ではありませんが──えぇ、少なくとも"不老"です」
厳密に言うのなら、機械のボディにも寿命はある。
ただ、それは生物のソレよりずっと後。そうなった後も、"その先"があるかもしれない。
独り旅ゆく男を瞳に、少女が語るのは永遠だった。小数点の向こう側にある未来だった。
「ですから──だから! 百年後も千年後も、たとえ一億年後だって。わたしは貴方を……ずっとずっと、"覚えています"」
ぽかんと呆けている。
突然の告白を聞いて、振り向いた男は固まっている。
だとしても、何が変わるというのだろう。
自分が死ぬのは変わらない、価値を見出せないことだって。
だけれども、どうしてだろう。
すぐ傍にあるような永遠は、彼の何かを動かしたらしい。
「……十億年後も?」
「えぇ、十億年後も」
白髪が揺れる、雲がなびく。
「……太陽が弾けても?」
「そうしたら、別の太陽系に行くでしょうね」
ステップの音がする、向かいのホームで電車が発つ。
「……宇宙が終わったとしたら?」
「解釈は無数にありますが、次の宇宙へと旅立ちます」
少女は笑う、男は呆れる。
太陽は傾く、朝は終わって昼が来る。
『永遠なんて遠くない』と、機械の少女は胸を張った。永久に解けない夏のこと、ちっぽけな"おとぎ話"を語ってみせた。
最初から分かり切ったこと、それは何も変えやしない──けれど。
「ははっ。うん、いいね。それなら、ちょっとだけ……寂しくはなさそうだ」
くしゃっと微笑んで、それから男は歩き出した。
世界の外まで繋がる空港。少女と一緒に、窓際のベンチに座り込んで。
終わりが来たらなんて言おう──解なんてやっぱり無いけれど、零れた台詞はひとつだけ。
「ねぇ、ケイ──」
大空へ旅立つ飛行機雲。
それだけをぼぅっと見つめて、痩せた男は呟いて。
ただそれだけの夏だった。
物語の終わった日、永久に解けない夏だった。
◇ ◆ ◇
終わりが来たらなんて言おう。
その解なんて、誰も持ち合わせていない。
『ねぇ、ケイ──』
季節は巡る、世界は廻る。
だけれども、飛行機雲を覚えている。
『綺麗だ。』
ちっぽけな約束は、温かく残っている。
日本語
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi

【コラボ情報!】
#ウマ娘 × #gladgarb
アパレルプロジェクト「gladgarb(グラッドガーブ)」とのコラボが決定!
ウオッカとレッドディザイアがモデルを担当する描き下ろしビジュアルを初公開!
続報をお楽しみに!

日本語
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi

「……やっちゃったね、先生」
枕を抱いてオトギは笑う。
暗がりの寝室、目を覚ませば外は朝。小鳥がチュンと鳴いて、ベッド下の携帯からはアラーム音。
咳払いに隣を見れば、髪の解けた少女の姿。それはつまり、
「その、一夜の過ちってヤツかなぁ」
昨晩を脳裏に、男は崩れ落ちていた。
一言で纏めるのなら、"まちがい"のあった夜だった。
◇
確率の話をしよう。
街角で一枚だけ買ったとして、十億の宝くじが当たるかもしれない。豪雨の夜に出歩けば、一歩目で雷に打たれるかもしれない。
先の夜に起こってしまったのも……類するのなら、それらときっと同じこと。
『……おーい。大丈夫、先生? 顔色悪いけどさ』
恐らくは大きなトラブルの後。オトギが顔を出したのなら、彼はベッドで横になっていた。
後から知ったことだが、薬物犯罪の摘発に関わっていたらしい。自分の時間などない二轍後、それもどうやら……気付いてはいなかったものの、"そういう薬"を吸ってしまったせいか。
崩れた体調の影で、特定の欲求が膨張していた節もあり……。
『……オトギ。かぇって、くれ』
『もう、なに言ってんのさ! 置いてけるワケないじゃん』
時計の針がぐるぐる回り、夜の帳が落ちた頃。
数奇な確率な重なってしまい、ひとつの"まちがい"は起きてしまった。
添い寝でもしてあげようかな──ちょっとした意図もありつつ、少女がベッドに座った瞬間。
『──せんせい?』
キャリーオーバーの宝くじが当たるような、晴天で雷に打たれるような。
正常な判断能力を失った彼は、震える手を伸ばしてしまっていた。ヘッドバンドが宙を舞って、紅色のリボンが床に落ちて。
それから。
それからの時間は、良くも悪くも──この先もずっと、二人にとって『忘れられないもの』になってしまった。
◇
そうして迎えた休日の朝、柔らかな陽光の射し込む寝室。
めちゃくちゃ気まずそうな、だからとりあえず微笑んでいるような。
そんな少女とは対照的に、顔を覆ったままの大人は──。
「──殺してくれ」
「早まらないでよ?!」
とりあえずシャワーを浴びた後、彼はブツブツと繰り返している。
本当なら。避妊をした確証はあるものの──傍らの少女に向けて、掛けてやる言葉があったハズ。
ただ、それすら忘れてしまっているのは……これが決して、男にとっては笑い事ではないから。
乱雑に覆った手の隙間、うわ言は尚も響き続ける。
「……私が。高校生の頃、"良くないヒト"に騙されてしまった。だから……そういう大人にならないよう、子供を守れるよう。先生に、なったのに、」
「なるほど、ねぇ」
見たことのない大人を隣に、オトギは大きめのシャツを弄っている。
着るものが無くなってしまったから、そう借りている『先生』の服。漂ってくる彼の匂いには、やっぱりドキドキするような──瞼を閉じれば、未だ顔から火が出てしまいそうな。
『生徒』としては、あくまでそんな気分だった……けれど。
「うーん。一応言っとくと、まぁその──私としても、ちゃんと合意だからさ? こっちの法律だと、別に犯罪とかじゃないよ?」
「……それがおかしいんだよ。そういう……あぁ、そういう問題でもない」
──想像の五百倍重かった。茶化したくはなかったから、オトギはそんな台詞を呑み込んでいる。
長い三つ編みは解かれて、さらりと舞った茶の長髪。艶のある毛先を呑気に弄りつつ、少女はくすりと笑いかけた。
「でも、私が悪いと思うんだ。だって、ちょっと分かってたもん。何なら──うん、抵抗だってできた」
腕相撲ならオトギの圧勝だろうし、格闘術の心得だってある。だというのに、組み伏せられたのは……言ってしまえば、彼女自身の選択だ。
様子のおかしい想い人と、二人きりの夜と。流石に予想していたわけではないが、『期待』があったのも本心のひとつ。
「だから、先生は別に──」
「──いや、完全に私が悪い。私が私を律するべきだ。それ以外の何でもない」
「……もう、そんなコト言っちゃってさぁ」
ポーズなんかではない、まったくの本心から言っている。俯いた瞳を見たのなら、それぐらいは分かること。
彫刻のように固まったまま、虚空の一点を見つめたまま。声色ひとつ変えず、彼は続けてこう語る。
「初めて、だっただろう。本当に……申し訳ないことをした。望まぬものに、させてしまった」
「……マジで言ってんの?」
ベッドにごろんと寝転がって、先ほどの彼みたいに天井を仰いで。
周りにはやはり誰もいない。そう確認してから、オトギは少し……口を滑らせる。
「も~、あのさぁ! しょーじき言っちゃうと、私は先生"が"良かったよ。ふつーに好きだし、付き合いたい!って思ってたし」
「……それは単なる"憧れ"だ。大人と子供である以上、絶対に成り立ってはいけない」
──"億が一"があるとして、せめて卒業か成人を経てからだろう。
そう言い返されてしまえば、少女としては返す言葉もない。
奇妙なラリーを続けていれば、幾分か冷静さを取り戻したのか。彫刻の身体を少し崩すと、彼はスマホを取ろうとする。
「こうなってしまった以上、『先生』の職など辞するべきだろう。できるだけ早く、連邦生徒会から発表をして──」
「──待って、それはほんとにダメだってば!? たぶん……私が殺されちゃうよ」
あの先生と関係を持った。それだけでもスリーアウトだと言うのに──辞職のきっかけになった、そうなればもう試合を続けられない。
そんな記事でも出てしまえば、歩く夜道は蜂の巣だ。
こればっかりは、少女のワガママなんかではない。
ごろんと寝転がったまま、オトギはちょっと寂しそうに呟く。
「……分かるもん、間違いが起きたのは"薬"のせいだって。だから先生は、変わらず"責任"を果たしていくべきだよ。うん」
──お互いに忘れよう。
オトギは思っていた。そんな結論こそが、まぁ唯一の正解だろうと。
こんな機会は一睡の夢。宝くじが当たったことに感謝しつつ、何でもない日常に帰っていくべきで──。
「……責任。そうか、なるほど。責任、か」
彼の様子が、またおかしくなっている。そう気付いたのは、続く台詞を聞いた瞬間。
何でもないことのように、さも当たり前かのように。腕を組んだまま、彼はこほんと咳をして、
「オトギ。君が望むなら結婚をしよう」
「……え?」
時間の止まった刹那、奇妙なプロポーズはよく響いた。
ぽかんと呆けている。狐耳をピンッと立てて、反対に肩の力は抜けて。そのまま、なおも続く神妙な台詞を聞いている。
「あぁ、強制でも義務でもない──もちろん望まずとも構わない、その方が可能性としては遥かに高いだろう。言うなれば、君の権利だ。不可逆的な影響を、私は君に与えてしまったのだから」
「えぇっと? ちょ、ちょっと待ってくれない……?」
最初から分かっていた、彼は異様に真面目な大人だ。心から真摯な『先生』で、そう在ろうと自分を律している。
そんな存在が、奇跡的な"あやまち"を犯してしまったせいか──何かしらの巨大なエラーが、真面目な顔つきからは出力されている。
「……目安としては十年か。君が大人になって、きちんとした出会いをして。それでも万が一、私という人間が"最も上に"来ていたのなら──そのときは私が相手になろう。気にしなくていい、私が勝手にそうするだけだ」
「あのさ、それだと私がすっごいクズにならない? 何なのさ、そのキープ理論?」
目を合わせれば分かってしまう、彼は本当に"そうする"だろうと。
生徒の初めてを奪ってしまった。学生時代の、何はともあれ焦がれた人だ。人生に影響を与えてしまった、そう分かっているから──
天秤を歪なまでに傾かせ、何かしらの最善を尽くそうとしている。
もはや呆れてしまうぐらい、その在り方は伝わってくる。だからこそ、オトギはやっぱり首を振った。
「いやまぁ、他に経験のない身で言うのも何だけどさ? たった一回じゃん、先生も気にしなくていいって! ほんとに!」
上体を起こした勢いで、ベッドからパッと飛び降りて。
ぐ~っと伸びをして、透き通った長髪をなびかせて。背負った朝陽のせいだろうか、どこか目元に影を差すと……ぽつりと零れた一言が、二人きりの空気を揺らす。
「……私だってさ、本気にしちゃうよ?」
過ぎた夜は戻らない。
たとえ"まちがい"だったにせよ、億万分の一だったとして。関係はきっと変わってしまう、爪の長さを知らなかった頃には戻れない。
不正解は既に過ぎて、何が正解かなんて分からないもの。
混乱する思考をどうにか冷やして、少女はシャツの襟を正す。
「そもそも、さ。責任を取らなきゃ!ってなってるだけで、先生はそんなに……私のこと、好きってワケでもない。違うかな」
「それは……」
即答できなかったのは、ある意味では当然の構図。
発想が存在しなかった。例外中の例外が起こっただけで、『生徒に手を出す』という選択肢など無い。
薄緑の視線にジッと刺されて、男は自分の矛盾に気が付いて。気まずい沈黙が流れた後、業を煮やした少女は叫ぶ。
「も~~~! それじゃあさ、もう──うん、何でもいいから!!」
──デート行こう、明日!!
"責任"の取り方としては、ひとまずはそれで落ち着いたらしい。
トラウマをよぎらせる彼を宥めて、『本当に大丈夫だから!』と繰り返して。それからオトギは、乾燥の終わった制服に袖を通して──。
「──じゃあね、先生。本当に、何も気にしなくていいから!」
体調に気を付けるんだよ?
それだけを言い残して、少女は足早に去っていく。
一人残された男は、果たして何を思うのか。掌に残った感触と、ガンガンと痛む頭蓋骨と──それに何より、一夜を過ごしてしまったあの少女。
自分の学生時代を思い出して、男はぽつりと呟いた。夜も時間も戻らない──だとしても、だからこそ、
「……五年前だったらな」
彼女には聞かれていない、だからこその本心だった……けれど。
すぐ傍の廊下、聞き耳の狐耳が見えたような。
遠ざかっていく足音が、今度こそ聞こえたような。
それらは気のせいだと断じたのか、彼もまた日常へと戻っていく。
夜は明ける、朝は来る。
だけれども、その先なんて誰も知らない。
日本語
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi
Rayla retweetledi

「プリティーダービーガチャ」開催です!
また、「セレクトピックアップ サポートカードガチャ」も開催です!
詳細はお知らせをご確認ください。
umamusume.jp/news/detail?id…
#ウマ娘 #ゲームウマ娘

日本語
Rayla retweetledi



























