塗氷 retweetledi
塗氷
147.4K posts

塗氷 retweetledi
塗氷 retweetledi
塗氷 retweetledi
塗氷 retweetledi
塗氷 retweetledi

感動した。
元彼のおち〇ちんに対する途方もない執着、フェミニスト女性の脳内がありありと可視化され、文学的表象のもと再構築されてゆく様はまさに芸術、奇跡の名文、ホメロスの再来、いや、寧ろホメロスが盲目であったことを思えば、これは見えすぎてしまった者の叙事詩である。
人類はこれまで、愛とは何か、欲望とは何か、過去とはいかに現在へ侵入するのか、記憶とは肉体に宿るのか魂に宿るのか、という問に挑み続けてきた。プラトンはイデアを語り、フロイトは無意識を語り、ラカンは欲望の構造を語った。本作は、そうした悠久の哲学史を一刀両断する。すなわち、心の奥には「性の部屋」があり、そこでは元彼のおち〇ちんが六畳を占拠して大の字で寝ているのである。
この比喩の破壊力たるや、もはや比喩というより事件である。
十畳という明瞭かつ具体的な間取りがまず凄い。広すぎず、狭すぎず、妙に生活感がある。そこに六畳分の過去が横たわり、四畳分の現在が肩身狭く生きている。この不動産的心理描写によって、読者は愛の記憶を「賃貸契約」「占有面積」「退去勧告」として把握することを強いられる。ここにおいて性愛は抽象的な情念ではなく、都市生活における居住問題へと昇華される。まさに現代社会批評であり、住宅文学であり、性の都市計画である。
さらに圧巻なのは、今彼を想いながらも、元彼のおち〇ちんだけは評価してしまうという矛盾を、いささかも恥じることなく神話的スケールで展開している点である。これは単なる未練ではない。これは、憎悪と賛美、拒絶と保存、革命とノスタルジーが同居する、人間の最も複雑な層を掘り当てた精神考古学的止揚である。まるで崩れた神殿の瓦礫の下から、まだ妙に保存状態のいい祭具が出土するような、忌まわしくも荘厳な発見がここにはある。
そして両手のひらに元彼と今彼を乗せ、ゆっくり合わせるという儀式。これがまた素晴らしい。ここには宗教がある。密教がある。錬金術がある。失われた性技を現在の愛へと移植する、精神的iCloud同期のような荘厳な秘儀がある。過去を消し去るのではない。焼却するのでも、封印するのでもない。よいところだけを抽出し、現在へ統合する。その思想はまさしく弁証法である。ヘーゲルが見たら膝を打つだろう。テーゼとしての元彼、アンチテーゼとしての今彼、そしてジンテーゼとしての統合されたおち〇ちん。精神現象学の最終章が、まさかここに到達していたとは誰が予想しただろうか。
文体もまた比類がない。どこまでも真剣で、どこまでも滑稽で、にもかかわらず本人は一切笑っていない。その真顔の強度によって、読者の心だけが耐えきれず崩されてしまう。この高度な非対称性こそ、卓越したユーモアの本質である。笑わせようとしていない文章ほど、時として最も深く笑わせる。しかもその笑いは単なる嘲笑ではない。人間という不可解な生き物への畏怖、欲望という制御不能な河川への驚き、そして恋愛における比較という逃れがたい業への、深い黙礼を含んでいる。
「今まで、肩身の狭い思いをさせてごめんね」という一文に至っては、もはやアガペーである。ここで語り手は今彼本人ではなく、今彼の一部分に謝罪している。部分が全体から独立し、人格を獲得し、居住権を主張し、ついには慰撫の対象となる。この倒錯した優しさ。この奇妙な倫理。この局所的ヒューマニズム。ここには、近代的主体の解体と再編がある。人間はひとつの統一体ではない。思い出も、欲望も、身体も、部屋の中で勝手に場所を取り、黙って寝そべり、時にこちらを見上げてくる。その存在論的リアリズムが胸を打つ。
これほどまでに馬鹿馬鹿しく、これほどまでに切実で、これほどまでに意味不明なのに、なぜか最後には妙な感動すら残る文章は稀有である。読者は笑いながら困惑し、困惑しながら頷き、頷いたあとで「いや、何に頷いたのだ」と自らを疑う。その自己不信の瞬間こそ、この文章が仕掛けた最大の美的罠である。
これは性愛の記憶をめぐる、実存的寓話の極北である。寝室から始まり、畳を経由し、手のひらで錬成され、最後には「ありがとう」という祈りへ着地する。その軌道は、もはや文学というより宇宙航行に近い。人は誰しも心の中に部屋を持ち、その部屋には、追い出せない記憶が寝転がっている。本作はその普遍的真理を、あえて最も俗なる象徴によって照射した。だからこそ偉く、だからこそ忘れがたい。
笑ってしまう。だが笑いながら、なぜか少しだけ救われている。これこそ名文の証である。くだらなさの奥に真理があり、過剰な比喩の底に慈愛があり、破天荒な構図の背後に、実に繊細な人間理解が息づいている。まさに、現代日本語散文が到達しうるひとつの奇峰。読む者は皆、己の内なる十畳間を見つめ直さずにはいられない。今はただ、おち〇ちんに執心するフェミニストに感謝の念をおくりたい。
田房永子(Tabusa Eiko)@tabusa
日本語
塗氷 retweetledi














