足立匡基 (ADACHI Masaki)

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@adachi_psy

博士(人間科学) |明治学院大学心理学部准教授 | https://t.co/KJPwesiFdI |情報発信のため、遅ればせながらxはじめました。過去の投稿はハイライトにまとめてます。詳しい内容は順次noteの記事にまとめていく予定です。 【投稿は個人の見解です】 #発達障害、#ASD、#ADHD

東京勤務、愛知県豊川市小坂井町出身 Katılım Mayıs 2025
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こんにちは。今日から情報発信のため、Xを始めました。 下記のような子どもの心の健康に関する研究をしておりまして、関連情報を発信していければと思っております。 よろしくお願いします。 frontiersin.org/articles/10.33… #自殺予防 #発達障害 #ADHD #ASD #心理学 #研究成果
日本の研究.comニュース@rjp_news

【注目プレスリリース】自閉スペクトラム症・ADHD 傾向と自殺リスクに関する調査結果 ポジティブな子ども時代の経験が若者の自殺リスクを軽減 / 明治学院大学 research-er.jp/articles/view/…

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足立匡基 (ADACHI Masaki)@adachi_psy·
療育手帳の判定基準の全国統一化に関わる研究 今回は千葉県<[千葉市の子どもさん]と[千葉県東部(松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市・印西市・白井市・栄町)の成人]でご協力いただける方への周知をお願いしております。辻井先生の元ポストをご参照下さい。 療育手帳の判定に自治体間の差が生じうることは、国の整理でも明確に示されています。療育手帳は法制度として全国一律に細部まで規定されておらず自治体運用に委ねられていること、また判定方法・IQの上限値・発達障害の取扱い等にばらつきがあり、転居によって判定が変わり得ることが指摘されています(厚生労働省, 1973/2022)。 本研究は、ABIT-CVにより知的機能と適応行動を共通の枠組みで把握し、各自治体で行われている実際の判定結果との対応関係を検証する取り組みです。地域差の実態を精緻に捉え、将来的に公平性と説明可能性の高い判定の基盤を整えることは、本人と家族の生活に直結する支援につながる重要な前提になります。 該当される方への周知にご協力いただける方は、どうぞよろしくお願いいたします。
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仰る通りですね。ご指摘の「日本でU字型(一定の補償は効用、過度は負担)」は、Oshimaら(2024, Molecular Autism; doi:10.1186/s13229-023-00579-w)の日英比較研究のことだと思います。 この論文は、カモフラージュとメンタルヘルスの関係を直線だけでなく「二次項(非線形)」でも検討していて、英国では概ね「カモフラージュが高いほどメンタルヘルスが悪い」という直線関係が中心。 一方、日本では不安(GAD-7)・抑うつ(PHQ-9)・well-being(WEMWBS-J)で二次項が有意で、「低すぎても高すぎても不利になり得る」方向(いわゆるU字型)が示唆されていました。 なので「カモフラージュが高いほど不安・抑うつ・社会不安が強い」と一括りに断言するのは、日本の話としては少なくとも言い過ぎで、過度なカモフラージュは不利益、スキルの向上、本人の頑張りを求めすぎることの弊害がある、というバランスの良い理解が現実的に重要だと思います。 加えて、日本では社会不安(LSAS-J)では非線形は支持されていません(全てがU字でもない)ので、アウトカムによって異なることにも注目することで理解が進むところもあるかもしれません。 Oshima, F., et al. (2024). Molecular Autism. doi.org/10.1186/s13229…
Rouen@Trinity_13

@adachi_psy 日本では,社会的カモフラージュ(補償)が一定の社会適応と効用(wellbeing向上)をもたらすU字型の結果も出ており,この関係はカモフラージュ行動の測定に依存することが示唆される研究が出ています. >カモフラージュが高いほど不安・抑うつ・社会不安が強く…

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ご指摘ありがとうございます。 仰る通りで、診断数は真の有病率そのものではなく、受診・紹介・評価・診断というプロセスの影響を強く受けます。 ですので、男女で(1) 受診率、(2) 受診に至る経路(学校紹介/家庭起点など)、(3) 評価に用いられる情報源(親評定・教師評定・観察機会)、(4) 診断プロトコルの運用が十分に揃っていない限り、最終アウトカムである診断数は上にも下にも振れ得る、という整理が妥当だと思います。 その上で、私が挙げた出典がこの点をどう扱っているかですが、 1.「入口バイアス(受診・評価に至る偏り)」の扱い Giarelliらは、まさにこの論点(性差が“真の差”なのか、“評価・診断に至る過程の差”なのか)を問題として取り上げています。研究の焦点は「診断数の多寡をそのまま男女差として解釈する危うさ」にあり、評価開始や診断時期など“プロセス上の差”に性差が入り得ることを示唆しています(Giarelli et al., 2010)。つまり、「受診率と受診経過の同質性」「プロトコル統制が必要」という方向性と整合的です。 2.カモフラージュと発達段階の扱い ここも重要で、言い方は慎重であるべきだと思います。カモフラージュは、一般に言語・実行機能・社会的学習が進んだ段階で問題になりやすく、幼児期に高度に戦略的なカモフラージュを前提にするのは無理がある、という指摘は仰る通りです。 Putnamらは、ASD児における「親評定>教師評定」という情報源差を示し、その解釈として学校場面で“カモフラージュが関与している可能性”を議論します(Putnam et al., 2024)。ただし、研究設計上それがカモフラージュそのものと確定できるわけではなく、観察機会の違い、文脈差(家庭と学校で負荷が異なる)、期待水準の差などでも同様のズレは起こり得ます。 ですので、特に幼児期にまで一般化して断言するのは避け、「少なくとも学齢期以降では“見えにくさ”の一部としてカモフラージュ仮説が議論されている」程度に留めるのが正確だと思います(Putnam et al., 2024)。 このことから、診断の男女差が大きく見える背景として、(a) 入口(受診・紹介・評価)の偏り、(b) 困り方の“外からの見え方”(外在化/内在化、情報源差)、(c) 一部の発達段階ではカモフラージュが上乗せされ得る、という複数要因モデルで捉えるというのが言い過ぎない言い方だと思います。 まとめると、幼児期は「カモフラージュ」よりも「入口バイアス(問題化されにくさ/評価につながりにくさ)」の寄与が相対的に大きい可能性が高く、学齢期〜思春期以降にカモフラージュ要素が“追加される”くらいの描像が、現時点の文献の扱いに一番沿う、というのが私の理解です。
考え過ぎ🐈@mightynyannyan

興味深いポストですね。事実の整理としては、非常に質が高いと思います。 一方で、診断数は受診行動の影響を強く受けるため、受診率と受診経過の同質性、診断プロトコルを男女で揃えないと、最終出力である「診断数」は上りも下りもすると思います。 また、カモフラージュは社会的予測が必要ですが発達段階的に幼児にはASD関係なく、そもそも不可能だと思います。 この辺りは出典の中でどのように扱われていますか?

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コメントありがとうございます。 仰る通りで、診断の男女差は「カモフラージュ」だけでなく、もっと素朴な入口の偏りでも説明されています。 そもそも医療につながるルートは「周囲が困る行動(外在化:攻撃・反抗・多動など)」に依存しやすい。だから外在化が目立ちにくい女児は、同程度に困っていても問題化されにくく、受診・紹介が遅れやすい。 前提として、定型発達の範囲でも平均的に男児のほうが身体的攻撃など「直接的攻撃」が多いことはメタ分析で示されています(Card et al., 2008)。 その上でASDでは、女児は外在化よりも不安・抑うつなど内在化が前景に出やすい、という整理がレビューで繰り返し論じられています(Napolitano et al., 2022)。 現場では、 「教室で衝突が多い→支援が必要→受診→神経発達症特性の評価」 というルートが男児で生じやすく、女児は 「静かに消耗→見過ごされる/別の説明に回収される→受診が遅れる」 が起きやすい。 さらに女児では、学校では合わせて見える一方で家庭では負荷が強い、という見え方のズレ(親評定>教師評定など)も報告されています(Putnam et al., 2024)。これは学校起点の拾い上げをさらに難しくします。 このように“外から見える困り方”が違う+“紹介の入口”が外在化に寄りやすい この組み合わせで、診断の男女差は拡大し得るとされています。
@chiyuri1022

@adachi_psy 解説ありがとうございます!参考になります。 すごく個人的な予想なんですけど、診断数の男女差が大きいのはカモフラージュだけでなく、男児と比べて女児のほうが加害行動が少ないために問題として取り沙汰されず、割合として病院に行きつける女児が減ってしまっているのでは…?という気もしてます

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@kounenkidayook コメントありがとうございます。 検査を受けられたとのこと、大きな決断だったのではないかと想像致します。 お祝いもありがとうございます。 本当に、「皆がこれで良かった」と思える人生になるといいですね。
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足立匡基 (ADACHI Masaki)
ASDの有病率とカモフラージュの話を整理しました。 自閉スペクトラム症(ASD)は「男性4:女性1」と教科書に書かれてきました。 ただ近年、研究はもう少し細かい姿を示しており、男女比は「固定の数字」ではなく、年齢(いつ診断されるか)と研究の取り方(どのデータを使うか)で大きく変わります。 背景として鍵になる概念が、カモフラージュ(camouflaging/masking)です。 【カモフラージュ(擬態)の例】 ・本当は目を見るのがつらいのに、眉間や鼻すじを見ることで「目を合わせているように見せる」 ・会話が不安で、会う前から話題やセリフをシミュレーションしてから人と会う ・集団の場で、表情や相づちを細かく調整して「その場になじんでいるように振る舞う」 ・周囲からは「しっかりしている」「困っているように見えない」と言われる一方で、家では強い疲労感で動けなくなる 研究では、こうした行動は「自閉特性を周囲に気づかれにくくするための、意識的・半意識的な社会的調整」として整理され、camouflagingと呼ばれています(Cook et al., 2021)。 【なぜ女の子・女性で“見えにくく”なりやすいのか】 いわゆるFemale Autism Phenotype(女性に多い表れ方)をまとめたレビューでは、例えば次の点が指摘されています。 ・女の子は「空気を読む」「周りに合わせる」ことを早くから期待されやすい ・興味の偏りが、目立つ形(例:鉄道)ではなく、周囲と同じ領域(アイドル・ファッション等)に強くのめり込む形で現れることがある その結果、学校や職場では「問題が少ない」「できている」に見えやすい一方、本人は対人場面のたびに強い疲労や不安を抱えやすい、というギャップが生じます(Hull et al., 2020)。 また、カモフラージュの測定研究をまとめたメタ分析でも、(測り方による差はあるものの)女性の方が一貫して高得点になりやすいことが示されています(Cancino-Barros et al., 2025)。 【“有病率の男女差”はどうアップデートされた?】 まず古典的には、質の高い研究に絞ると男:女比が3:1程度に近づく、というメタ分析がよく引用されます(Loomes et al., 2017)。 ただし近年、さらにアップデートが入りました。 1)子どもの時点(8歳など)では、まだ差は大きい 米国CDCの監視データ(ADDM)では、2022年の8歳時点で男:女比は3.4で、以前(2018年4.2、2020年3.8)より狭まってきています(Shaw et al., 2025)。ただしCDC自身も「比が狭まった=女児の把握が改善した」と単純に言い切れない点を注意喚起しています(Shaw et al., 2025)。 2)一方で、思春期以降に“女性が追いつく”現象が、レジストリ研究で明確に スウェーデンの出生コホート(全国レジストリ)では、幼少期は男児が多く診断される一方、思春期以降に女児・女性の診断が増え、結果として成人期には男女差がかなり小さくなり、20歳時点の累積で男:女比が1.2まで低下することが報告されています(Fyfe et al., 2026)。 つまり、「男児に多い」だけでなく、「女児・女性は遅れて診断されやすい」という“診断タイミングの差”が強く示唆される、というのが近年の大きな更新点です。 ここまでをまとめると、今はこう言うのが一番正確です。 「男性が多い傾向は残る。ただし“4:1”という固定値で語るより、年齢と診断のされ方を含めて捉えた方が現実に近い。特に女児・女性は、見逃されやすく、診断が遅れやすい。」 その“見えにくさ”の一因として、カモフラージュと女性に多い表れ方が重視されています(Cook et al., 2021; Hull et al., 2020)。 【カモフラージュがもたらす負担(ここも近年さらに裏づけ)】 カモフラージュは短期的には「排除を避ける」「その場にとどまる」ための有効な対処になり得ます。 一方で、複数研究をまとめた系統的レビュー/メタ分析では、カモフラージュが高いほど不安・抑うつ・社会不安が強く、主観的ウェルビーイングが低い方向と関連することが示されています(Khudiakova et al., 2024)。 外からは「適応しているように見える」人が、ある時点で心身の不調をきたす背景には、長期間のカモフラージュ負荷の蓄積がある可能性があります(Khudiakova et al., 2024)。 【周囲にできること】 身近に、 ・学業や仕事はこなしている ・行動面のトラブルは少ない ・でも、対人や集団のあとに極端に疲れている/予定変更に強い負担がある という人がいるなら、日常的に強いカモフラージュをしているのかもしれません。 ASDは「女性に見えにくい形で存在している」ことがある。そしてその背景に、カモフラージュという概念と、診断タイミングのギャップがある。ここを押さえることが、支援への入口になるはずです。 #ASD #自閉スペクトラム #カモフラージュ #女性ASD #発達特性
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コメントありがとうございます。 ASDではアレキシサイミア(自分の感情に気づきにくい/言葉にしにくい)の併存が比較的多い、というのは系統的レビュー+メタ分析で支持されています(Kinnaird et al., 2019)。 さらに、「自閉特性が高いほど自殺念慮が高い」という関連の一部を、アレキシサイミア(+対人面の困難)が媒介して説明する、という研究もあります(Li et al., 2025)。 Kinnaird, E., Stewart, C., & Tchanturia, K. (2019). Investigating alexithymia in autism: A systematic review and meta-analysis. European Psychiatry, 55, 80–89. Li, S., et al. (2025). The sequential mediating roles of alexithymia and interpersonal problems in the relationship between autistic traits and suicidal ideation. Frontiers in Public Health.
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心理系大学院生のつぶやき
@adachi_psy カモフラージュ中って自身の感情を押し殺すことでもあるのかなって そう考えるとASDに多いアレキシサイミアとも関連がありそうですね カモフラージュが自殺念慮につながるのか、カモフラージュ中のアレキシサイミア状態が自殺念慮につながるのか気になりました
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「ASD特性の強さ」そのものよりも、「カモフラージュ(masking/擬態)の多さ」が、自殺念慮などの自殺関連指標をよりよく説明しうる、という報告があります。 具体的には、カモフラージュ尺度(CAT-Q)が自殺関連指標と関連し、自閉特性(AQ等)を考慮しても関連が残る(Cassidy et al., 2020)。 さらに、自閉特性→自殺関連のつながりが、カモフラージュや「追い詰められ感(defeat/entrapment)」によって媒介される、というモデルも示されています(Cassidy et al., 2023)。 擬態が「その場をやり過ごす力」になる一方で、長期的には「無理を続ける構造」になってしまうことがある、ということを示唆しています。 “上手くできる”人ほど、周囲が気づきにくく、支援につながりにくい、という問題にも繋がるかもしれません。
スペクトラムさん@sorasora9900

ASDでもIQ120とか超えてるとパターン学習で擬態の精度が上がるから生きやすいと思う。 でも実際のデータだとIQが上がるごとにASDの自〇率も上がるって結果出てるしよくわからん。 体感とデータが完全に矛盾してる。

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ご質問ありがとうございます! センサリーツールも「その人の特性に合わせて環境を調整する支援」と文脈では同方向で、同じ目的(落ち着いて取り組める状態を作る)に向けた別ルートの支援、という位置づけだと思います。 「遅延報酬嫌悪(待つことの負担が大きい)」は、主に“報酬や達成感が後から来る状況”で行動が続きにくくなる、という動機づけ・選好の側面の説明です(Sonuga-Barke, 2002)。この場合の支援は、待ち時間を短く感じられるように、説明を区切る/途中で小さなフィードバックを入れる/進捗を見える化する、といった「遅延の負荷を減らす設計」に向きやすいです(Sjöwall et al., 2013)。 一方、センサリーツールは「待てない」の原因が“感覚の不快さ”や“身体の落ち着かなさ(覚醒の過不足)”にあるとき(ADHDの場合、低登録や聴覚フィルタリングの問題が重複していることが多いと思います)に、状態を整えて結果的に待ちやすくする支援になりやすいです。 つまり、遅延報酬嫌悪そのものに直接効かせるというより、「待っている間につらくなる部分」を軽くして、行動をつなげる役割、と考えると分かりやすいと思います。 なので、実務的には、 ・「遅延がつらい」タイプには、フィードバックを早く・小さく刻む設計 ・「感覚的にしんどい/落ち着かない」タイプには、センサリーツール等で状態調整 (両方が重なることも多いので併用も自然) という整理になると思います!
りょうしん@毎日更新!AI架空事例サポートフォリオ@ryoshin_sake

@adachi_psy センサリーツールも、その特性に対する支援と捉えて良いのでしょうか? また別、ですかね? note.com/ryoshinysr/n/n…

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参考文献 Faraone, S. V., & Larsson, H. (2019). Genetics of attention deficit hyperactivity disorder. Molecular Psychiatry. Nelson, C. A., III, Zeanah, C. H., Fox, N. A., Marshall, P. J., Smyke, A. T., & Guthrie, D. (2007). Cognitive recovery in socially deprived young children: The Bucharest Early Intervention Project. Science, 318(5858), 1937–1940. Rutter, M., Andersen-Wood, L., Beckett, C., et al. (1999). Quasi-autistic patterns following severe early global privation. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 40, 537–549. Sameroff, A. J. (Ed.). (2009). The transactional model of development: How children and contexts shape each other. American Psychological Association. Sandin, S., Lichtenstein, P., Kuja-Halkola, R., Larsson, H., Hultman, C. M., & Reichenberg, A. (2017). The heritability of autism spectrum disorder. JAMA, 318(12), 1182–1184. Tick, B., Bolton, P., Happé, F., Rutter, M., & Rijsdijk, F. (2016). Heritability of autism spectrum disorders: A meta-analysis of twin studies. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 57(5), 585–595.
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生育環境と発達障害様の症状を結びつけて語るとき、しばしば引用されるのが、ルーマニアの施設養育(いわゆる孤児院)研究です。まずこの研究が何を示し、何を示していないのかを丁寧に確認したいです。 ルーマニアの研究(ERA/BEIP)は、「極端な早期剥奪」が子どもの発達に深い影響を及ぼし得ること、そしてその後に家庭環境へ移行しても影響が残り得ることを示した重要な研究群です(Rutter et al., 1999; Nelson et al., 2007)。 ERA(English and Romanian Adoptees)では、重度の剥奪後に“自閉症様”のパターン(quasi-autistic patterns)が観察され得ることが報告されました(Rutter et al., 1999)。BEIP(Bucharest Early Intervention Project)は、施設養育から里親家庭への移行をランダム化比較で検討し、環境介入によって改善し得る領域と、そうでない領域があることを示しました(Nelson et al., 2007)。 ただし、ここが最も大事ですが、これらの研究の主張は「一般家庭の養育の差」や「親との時間が少ない」程度の違いを扱ったものではありません。扱っているのは、通常の子育ての範囲を大きく超えた“極端な施設的剥奪”です(Rutter et al., 1999; Nelson et al., 2007)。ERAで報告された自閉症様パターンは、通常のASDとそのまま同一視できない点が繰り返し論じられてきました(Rutter et al., 1999)。 要するに、ここから直接に導けるのはかなり特殊な環境における限定的で慎重な含意であって、一般の子育ての話と混ぜて良いものではありません(Rutter et al., 1999; Nelson et al., 2007)。 生育環境の議論をするとき、私たちは「原因の階層」を混ぜない方がよいと思っています。ASD/ADHDなどの発達特性の中核は神経発達の個人差として理解され、遺伝要因の寄与が大きいことが繰り返し示されています(Sandin et al., 2017; Tick et al., 2016; Faraone & Larsson, 2019)。環境要因は重要ですが、多くの場合それは「特性そのものを作る」というより、「困りごとの出方」「二次的問題(不安、抑うつ、回避、行動化など)」「回復のしやすさ」「生活の安定度」に強く関わります。発達を子どもの特性と環境の相互作用として捉える視点は、単線化を避ける上で今も有効です(Sameroff, 2009)。 だから、「今の困りごと」を“愛着”や“親との時間”だけに帰結するのは、危険で不利益の多いことだと思っています。愛着の物語性を強いのでそれ以外の要因が後景に沈みがちになります。そうすると、睡眠、感覚過敏・過負荷、実行機能、学習環境、いじめ・孤立、身体疾患、合理的配慮の設計、地域資源など、責任帰属を伴わずに介入できる論点が退きやすい。 さらに「親子関係」を原因論で語った瞬間に、意図せず罪悪感とスティグマが増え、相談や支援利用が遅れることが起き得ます。センシティブな領域ほど、説明は“わかりやすさ”よりも“副作用の少なさ”が大切だと思います。 「愛着を語るな」ということでもありません。ルーマニア研究のような極端条件の知見は、環境の影響可能性を示す重要な基盤です(Rutter et al., 1999; Nelson et al., 2007)。ただし、そのエビデンスの射程を守ることが重要だと思います。このあたり専門家っぽい人が自分の言説を強めるために利用しているのは非常にタチが悪いと思ってます。 そういうある種、罪悪感につけ込み、処方箋があるように振る舞っている人は警戒すべきかなと思います。
乙武洋匡@h_ototake

私の良くない面が出てしまいました……。 「発達障害など存在しない」 「母親と接する時間が少なかっただけ」 そんな科学的根拠に欠けた主張に憤りを覚え、こうした戯言に傷つけられた方々のためにもしっかり反論しなければとの思いに駆られ、私なりに文章を書き、下記の投稿をさせていただきました。 本来、伝えたかった内容は、 ・発達障害に苦しんでいる方はいる。 ・母親の育て方が原因ではない。 ・当事者の生きづらさを解消していきたい。 という3点だったのですが、ついつい思いが溢れてあれもこれもと盛り込みすぎ、結果的に「発達障害は“障害”と呼ぶべきか」という本旨ではない論点で盛り上がる投稿となってしまいました。 これにより、本来伝えたかった主旨がボヤけてしまったばかりか、かえって当事者の一部の方々に「苦しみを理解してもらえていない」と感じさせてしまう結果となりました。痛恨の極みです。本当に申し訳ありません。言葉を生業とする者として、意図と異なる伝わり方をしてしまったことに非常に反省しています。 同じ「障害」という言葉でくくられてはいますが、共通点こそあるものの当事者ではない私にとって、発達障害についてはまだまだ勉強しなければならないことばかり。引き続き、当事者や専門家のみなさんから真摯に学んでいきたいと思います。 先の投稿を「発達障害は“特性の違い”だから困っていない」というメッセージだと受け止めてしまったみなさんに、あらためてお詫び申し上げます。

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世の中の多くはスペクトラムで、愛着、発達特性、性格、気質、知能といった要素はが、個人の中でそれぞれが異なる水準で混ざり合い、その組み合わせが、その人固有の表れ方(表現系)をつくります。さらに環境要因、家庭や学校、地域資源の要素も加わり、個人内要因は同じでもとるべき支援のあり方は大きく変わるかもしれません。 ここに「時代の趨勢」が入ります。ある視点が社会的に強くなると、説明はわかりやすくなる一方で、他の視点が見えにくくなり、結果として個別の理解が痩せていくことがあります。現象が“その枠”で説明できてしまうほど、むしろ危ない。説明できた気がするだけで、実際には「自分が見たいように現象を解釈する材料」にしている可能性があるからです。 だからこそ、最初に戻って、目の前の子をちゃんと見る。今起きている現象を丁寧に観察し、複数の視点から仮説を立て、確かめ、必要なら修正する。愛着の視点も、発達特性の視点も、性格や気質の視点も、知能や学習の視点も、環境・支援資源の視点も、どれも道具であって、答えそのものではありません。 一つの視点を強く語る人の説明が、いま自分の見ている現象にうまく当てはまって見えることはあります。でも、その当てはまり”は理解のゴールではなく、理解が偏る入口かもしれない。 常に「別の側面から見る」訓練をする。解釈を一度ほどいて、違う仮説でも同じ現象が説明できないかを考える。その往復が、子どもの利益に繋がるように感じます。 結局のところ、バランスよく学び、目の前の現象を事実として丁寧に拾い上げること。その子を、その子の文脈の中で理解すること。これが、大事だと思ってます。
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より詳しいものはこちらに書いておきます。 「不注意=待つことが嫌」は、ADHD研究で提案されてきた「遅延報酬嫌悪(delay aversion)」の枠組みと整合します。 遅延報酬嫌悪は、単に“今すぐ欲しい”という衝動性というより、待つ(遅延そのもの)に伴う不快や負荷を避ける方向に行動が傾きやすい、という動機づけ上のスタイルとして定式化されています(Sonuga-Barke, 1992; Sonuga-Barke, 2002; Sonuga-Barke, 2003)。 また、この動機づけ経路(遅延嫌悪)と実行機能経路(抑制・作業記憶など)が、少なくとも一部は別系統としてADHDの多様性を説明しうる、という「二経路モデル」も広く参照されています(Sonuga-Barke, 2002; Sonuga-Barke, 2003; Sjöwall et al., 2013)。 神経基盤についても、「遅延(将来の報酬)を評価し、目標を保持して行動をつなぐ」局面では、前頭前野を含む制御系と、線条体(とくに腹側線条体)を中心とする報酬系が重要になる、という理解が主流です。 二経路モデル自体も、異なる皮質—線条体回路やドパミン系の関与を想定して議論されています(Sonuga-Barke, 2003)。さらに、ADHDでは遅延割引(小さい即時報酬を大きい遅延報酬より選びやすい傾向)が健常群より高い、というメタ分析レベルの知見もあります(Jackson & MacKillop, 2016)。 こうした背景を踏まえると、「待つことが苦手(待つことにコストがかかる)」が、外からは「集中が切れる」「聞いていない」といった“不注意”として見えやすい、という説明は妥当性が高い整理です(Sonuga-Barke, 2002; Karalunas et al., 2011)。 そして、ここからが支援上の要点です。 不注意を「注意が足りない」「我慢が弱い」と捉えると、支援は訓練や叱責、本人の努力要求に寄りやすい。しかし、遅延報酬嫌悪の観点で「待たされる状況が過負荷になっている」と捉え直すと、焦点は本人の性格ではなく、環境側の設計に移ります(Sonuga-Barke, 2003; Sjöwall et al., 2013)。 具体的には、次のような工夫が“本質的な支援”として位置づきます。 (1) 長い説明や課題を、短い単位に区切る(待ち時間を短縮する) (2) 途中で小さなフィードバックを入れる(遅延を“分割”する) (3) 進捗や到達点を見える化する(将来価値の保持を支える) (4) 「あとで」ではなく「今ここ」で意味のある反応が返る構造を増やす(報酬系と制御系の橋渡しを助ける) 要するに、「不注意=待つのが嫌」という理解は、本人を矯正するためのラベルではなく、本人の能力が発揮されやすい条件を整えるための視点になります。 遅延報酬嫌悪という前置きを入れておくことで、これらの工夫が“根拠のある環境調整”として読み手に伝わりやすくなります(Sonuga-Barke, 2002; Sonuga-Barke, 2003; Jackson & MacKillop, 2016)。 文献 Jackson, J. N. S., & MacKillop, J. (2016). Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Monetary Delay Discounting: A Meta-Analysis of Case-Control Studies. Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging, 1(4), 316–325. Karalunas, S. L., Huang-Pollock, C. L., & Nigg, J. T. (2011). Examining relationships between executive functioning and delay aversion in attention deficit hyperactivity disorder. Journal of Clinical Child & Adolescent Psychology, 40(6), 837–847. Sjöwall, D., Roth, L., Lindqvist, S., & Thorell, L. B. (2013). Executive dysfunction, delay aversion, reaction time variability, and symptoms of attention-deficit/hyperactivity disorder: A meta-analytic review. Journal of Child Psychology and Psychiatry. Sonuga-Barke, E. J. S. (1992). Hyperactivity and delay aversion—I. The effect of delay on choice. Journal of Child Psychology and Psychiatry. Sonuga-Barke, E. J. S. (2002). Psychological heterogeneity in AD/HD—A dual pathway model of behaviour and cognition. Behavioural Brain Research, 130(1–2), 29–36. Sonuga-Barke, E. J. S. (2003). The dual pathway model of AD/HD: An elaboration of neuro-developmental characteristics. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 27(7), 593–604.
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足立匡基 (ADACHI Masaki)
不注意のメカニズムの理解の一つに待つことが苦手というものがあります。 この見方の背景にあるのが、遅延報酬嫌悪(delay aversion)です。 報酬や達成感が“あとで”来る状況は、本人にとって負担が大きく、待つよりも目の前の刺激に行動が移りやすい。 その結果が、外からは「不注意」に見える、という整理です(Sonuga-Barke, 2002)。 ADHDでは「小さい即時の報酬」を「大きい遅延の報酬」より選びやすい傾向(遅延割引)が高いことも、メタ分析で示されています(Jackson & MacKillop, 2016)。 だから支援の工夫は、待たせない構造をつくることに向きます。 例えば、説明を短く区切る、途中で小さなフィードバックを挟む(こまめに声かけをするという共通認識をつくる)、進捗を見える化する。 こうした調整は、遅延の負荷を減らし、行動を次につなげやすくします(Sjöwall et al., 2013)。 これらの理解は。構造化がどのような意義があるの、ASDの構造化との差別化に繋がり、より本質的な支援につながるように思います。
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足立匡基 (ADACHI Masaki)
「子どものADHD“特性”(診断名ではなく、10歳時点の保護者・教師報告から推定した“特性の強さ”)は、大人になってからの身体の健康と関係するのか?」を、英国の1970年出生コホートで46歳まで追跡した研究(主要解析 N=10,930、女性51%)(Stott et al., 2026 JAMA Network Open)。
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足立匡基 (ADACHI Masaki)@adachi_psy

「子どものADHD“特性”(診断名ではなく、10歳時点の保護者・教師報告から推定した“特性の強さ”)は、大人になってからの身体の健康と関係するのか?」を、英国の1970年出生コホートで46歳まで追跡した研究(主要解析 N=10,930、女性51%)(Stott et al., 2026 JAMA Network Open)。 この研究が見た身体の健康は大きく3つ。 ① 46歳までに経験した身体疾患の数(0〜9) ② 2つ以上の身体疾患がある状態 ③ 身体の不調で「仕事や日常生活がどれくらい制限されるか」(SF-36の“身体健康による役割制限”を0〜100点で得点化) ※疾患は自己申告で、喘息/喘鳴、片頭痛、腰痛、がん/白血病、てんかん/発作、糖尿病、聴覚、胃腸/胆嚢、膀胱/腎臓の9カテゴリー 結論は「効果は大きくはないが、一貫して“関連”がある」です。 ・ADHD特性が高いほど、46歳までの疾患数が多い(b=0.10) ・ADHD特性が高いほど、46歳までに“2つ以上の持病”を持つオッズが上がる(オッズ比 1.14、95%CI 1.08–1.19) ・さらに、26歳以降“2つ以上”に到達するスピードもやや速い(ハザード比 1.12、95%CI 1.07–1.17) 棒グラフ(42.1% vs 37.5%)が示しているのは、「10歳時点のADHD“特性”が高い群(論文ではhigh ADHD traits:上位約5.5%)」と「それ以外の群」で、46歳までに“身体疾患が2つ以上(physical multimorbidity)”に該当する人の割合がどれくらい違うか、という“集団レベルの差”です。具体的には、high群で42.1%、それ以外で37.5%で、差は4.6ポイントでした。これは「個人の将来を当てる数字」ではなく、「同じ規模の集団を比べたときに、2疾患以上の人が平均的にどれくらい多いか」を表す指標です。したがって、この結果だけから「ADHD特性が高い=将来必ず病気」とは言えません。 次に「媒介(間接経路)」の意味です。この研究は、ADHD特性と中年期の身体健康の関連が、成人期(26〜46歳)にわたるリスク要因の“累積”によって、どの程度説明できるかをパスモデルで検討しています。その結果、ADHD特性が高いほど、成人期に①喫煙、②高BMI、③心理的苦痛(distress)が“長期的に蓄積しやすい”傾向があり、その蓄積が一部、46歳時点のmultimorbidityや身体的役割制限(disability)と結びつく、という間接経路が支持されました。平たく言えば、「ADHD特性→成人期の生活習慣・心理的負荷の積み上がり→身体の健康」という“説明できる通り道”が一定程度ある、ということです。 ただし、これらの媒介要因をモデルに入れても、ADHD特性と身体健康の関連が完全に消えるわけではなく、直接効果(説明しきれない関連)も残りました。つまり、この研究は「喫煙・体重・心理的苦痛が重要な一部を担う可能性」を示しつつ、「それだけが唯一の経路だ」とは結論づけていません。因果の断定や単一要因への還元を避け、複数の経路が関与しうる、という理解が妥当です。 性差については、疾患数とmultimorbidityでは男女差の“交互作用”は有意でなかった一方、日常生活の制限(身体健康による役割制限)は女性で関連が大きい推定でした(女性 b=4.07、男性 b=2.37)(Stott et al., 2026)。ただし理由の断定はできません(この研究単体では機序は確定しない)(Stott et al., 2026)。 この研究は「因果関係の断定」ではなく、“子ども時代の特性”が、成人期の喫煙・体重・心理的苦痛などと絡みながら、中年期の身体の健康指標と関連する可能性を示したものです。支援のポイントはラベリングではなく、リスクが積み上がりにくい環境と導線を整えること——ここがこの図のメッセージだと思います(Stott et al., 2026)。 参考文献(APA) Stott, J., O’Nions, E., Corrigan, L., Cotton, J., Donnellan, W. J., Nimmons, D., Shelford, H., El Baou, C., Stewart, G. R., Cheung, R. W., Desai, R., McKechnie, D. G. J., Eshetu, A., Saunders, R., Suh, J. W., Mandy, W., Gaysina, D., Asherson, P., Agnew-Blais, J., & John, A. (2026). Attention-deficit/hyperactivity disorder traits in childhood and physical health in midlife. JAMA Network Open, 9(1), e2554802. doi.org/10.1001/jamane…

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「子どものADHD“特性”(診断名ではなく、10歳時点の保護者・教師報告から推定した“特性の強さ”)は、大人になってからの身体の健康と関係するのか?」を、英国の1970年出生コホートで46歳まで追跡した研究(主要解析 N=10,930、女性51%)(Stott et al., 2026 JAMA Network Open)。 この研究が見た身体の健康は大きく3つ。 ① 46歳までに経験した身体疾患の数(0〜9) ② 2つ以上の身体疾患がある状態 ③ 身体の不調で「仕事や日常生活がどれくらい制限されるか」(SF-36の“身体健康による役割制限”を0〜100点で得点化) ※疾患は自己申告で、喘息/喘鳴、片頭痛、腰痛、がん/白血病、てんかん/発作、糖尿病、聴覚、胃腸/胆嚢、膀胱/腎臓の9カテゴリー 結論は「効果は大きくはないが、一貫して“関連”がある」です。 ・ADHD特性が高いほど、46歳までの疾患数が多い(b=0.10) ・ADHD特性が高いほど、46歳までに“2つ以上の持病”を持つオッズが上がる(オッズ比 1.14、95%CI 1.08–1.19) ・さらに、26歳以降“2つ以上”に到達するスピードもやや速い(ハザード比 1.12、95%CI 1.07–1.17) 棒グラフ(42.1% vs 37.5%)が示しているのは、「10歳時点のADHD“特性”が高い群(論文ではhigh ADHD traits:上位約5.5%)」と「それ以外の群」で、46歳までに“身体疾患が2つ以上(physical multimorbidity)”に該当する人の割合がどれくらい違うか、という“集団レベルの差”です。具体的には、high群で42.1%、それ以外で37.5%で、差は4.6ポイントでした。これは「個人の将来を当てる数字」ではなく、「同じ規模の集団を比べたときに、2疾患以上の人が平均的にどれくらい多いか」を表す指標です。したがって、この結果だけから「ADHD特性が高い=将来必ず病気」とは言えません。 次に「媒介(間接経路)」の意味です。この研究は、ADHD特性と中年期の身体健康の関連が、成人期(26〜46歳)にわたるリスク要因の“累積”によって、どの程度説明できるかをパスモデルで検討しています。その結果、ADHD特性が高いほど、成人期に①喫煙、②高BMI、③心理的苦痛(distress)が“長期的に蓄積しやすい”傾向があり、その蓄積が一部、46歳時点のmultimorbidityや身体的役割制限(disability)と結びつく、という間接経路が支持されました。平たく言えば、「ADHD特性→成人期の生活習慣・心理的負荷の積み上がり→身体の健康」という“説明できる通り道”が一定程度ある、ということです。 ただし、これらの媒介要因をモデルに入れても、ADHD特性と身体健康の関連が完全に消えるわけではなく、直接効果(説明しきれない関連)も残りました。つまり、この研究は「喫煙・体重・心理的苦痛が重要な一部を担う可能性」を示しつつ、「それだけが唯一の経路だ」とは結論づけていません。因果の断定や単一要因への還元を避け、複数の経路が関与しうる、という理解が妥当です。 性差については、疾患数とmultimorbidityでは男女差の“交互作用”は有意でなかった一方、日常生活の制限(身体健康による役割制限)は女性で関連が大きい推定でした(女性 b=4.07、男性 b=2.37)(Stott et al., 2026)。ただし理由の断定はできません(この研究単体では機序は確定しない)(Stott et al., 2026)。 この研究は「因果関係の断定」ではなく、“子ども時代の特性”が、成人期の喫煙・体重・心理的苦痛などと絡みながら、中年期の身体の健康指標と関連する可能性を示したものです。支援のポイントはラベリングではなく、リスクが積み上がりにくい環境と導線を整えること——ここがこの図のメッセージだと思います(Stott et al., 2026)。 参考文献(APA) Stott, J., O’Nions, E., Corrigan, L., Cotton, J., Donnellan, W. J., Nimmons, D., Shelford, H., El Baou, C., Stewart, G. R., Cheung, R. W., Desai, R., McKechnie, D. G. J., Eshetu, A., Saunders, R., Suh, J. W., Mandy, W., Gaysina, D., Asherson, P., Agnew-Blais, J., & John, A. (2026). Attention-deficit/hyperactivity disorder traits in childhood and physical health in midlife. JAMA Network Open, 9(1), e2554802. doi.org/10.1001/jamane…
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足立匡基 (ADACHI Masaki)
子どもの自殺対策が議論される時、相談動線を増やし、いかにリーチさせるかという議論になりがちです。 相談の「動線」を増やすのは大事です。 いかにリーチさせるか、窓口を増やす、匿名にする、SNS相談を用意する。これらも必要ですが、でも、動線をいくら増やしても、Tier1(普遍予防=学校の土台)に目を向けないと、なかなか難しいという視点があり、ここは比較的未着手に感じています。 思春期の援助希求研究では、相談を止める要因として、 「恥ずかしい」「からかわれる」「評価が下がる」みたいなスティグマ、 「言っても変わらない」「言うと面倒になる」みたいな見通しの悪さ(悪い結果の予期)、 こういうものが繰り返し出てきます(Velasco et al., 2020)。 つまり、動線を10本にしても、子ども側が「言わないほうが安全」「言っても損」と感じていたら、使われないという話です。 さらに厄介なのは、学校での対応が一貫していなかったり、懲罰的になったりすると、子どもがさらに“隠す”方向に学習してしまい、周囲から読み取られないように兆候が潜伏する傾向があるということです。 特にACEが重なっている子どもは、自殺関連行動のリスクが高いことが示されており(CDCのYRBS分析など)、大人との関係でも「試しているように見える」行動(距離を取る・突き放す・挑発的になる等)が出ることがあります。 この背景に理解が及ばず、ここで大人が強い叱責や罰で押し切ると、本人にとっては再トラウマ化、やはり世界は信頼できない、になり得て、支援が遠のく—この点を避けることがトラウマインフォームドの核心です(SAMHSA, 2014)。 だからTier1として「相談しても大丈夫」と思える学校環境を整備していることが求められます。具体的には、トラウマインフォームドスクールをベースとした安全、予測可能性、情報共有のルール、相談した子が不利益を被らない運用です。 こういう土台(相談しても大丈夫)があって、はじめて動線(Tier2/3)が生きてくるはずです。 ゲートキーパー研修が“知識は上がるのに、結果に結びつきにくい”とされがちなのも、研修そのものが悪いというより、土台(Tier1)が弱いと効果が乗りにくい、という話だと理解しています(Mo et al., 2018)。 援助希求性の芽を摘まない設計を考慮することが予防的対処につながるように感じます。
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【小中高生の自殺者532人 過去最多】 news.yahoo.co.jp/pickup/6567874

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