せれ
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せれ retweetledi
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翌月、その女の子がまた来ていた。
泣いてなかった。
おじさんは何も言わずにラーメンを出した。
今度はお金を受け取った。
女の子が食べながら言った。
「先月、ここに来てよかった。」
「そうか。」
「あの夜から、少し変われた気がして。」
おじさんが黙って次の客のスープを温め始めた。
女の子が続けた。
「なんで泣いてる人だけタダにするんですか。本当に。」
おじさんが少し間を置いて答えた。
「昔、俺も泣きながら飯を食ったことがある。その時に誰かにおごってもらったから。」
「その人、誰だったんですか。」
「知らない。一度も会ったことない人間だった。」
女の子が首を傾けた。
「知らない人が奢ってくれたんですか。」
「財布を忘れて途方に暮れてたら、隣に座ってたおじさんがそっと払ってくれてた。気づいたらもういなかった。」
しばらく間があった。
「だからここで返してる。その人に返せないから、別の誰かに返してる。」
女の子が黙って残りのラーメンを食べた。
食べ終わって立ち上がった時、財布を出した。
「今日の分と、先月の分も払います。」
おじさんが首を振った。
「先月の分はいい。」
「なんでですか。」
「あなたが次に泣いてる誰かに返してくれればいい。」
女の子が頷いた。
「わかりました。」
歩き出して、少しして振り返った。
「絶対に返します。」
おじさんが笑った。
10年間で一番いい顔をしてた。
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