ふぃどる@シューベルトの闇鍋 retweetledi

診察室に入ってまだ15秒も経っていなかったと思う。少し咳をしたら、医師がこちらを見て言った。
「逆流性食道炎って知ってます?」
あまりに予想外で、一瞬話がつながらなかった。
こちらの症状は、痰、咳、鼻水。自分では完全に風邪だと思っていたし、その流れで逆流性食道炎という言葉が出てくるとは思ってもいなかった。けれど医師の言い方には妙な迷いのなさがあった。ただ思いつきで言っているというより、何か確信があって口にしている感じだった。
「あなたは典型的な逆流性食道炎です」
咳もあるし、痰も出るし、鼻水も出ているので、やはり風邪ではないのかと伝えてみた。
すると医師は、そういう表面的な症状に惑わされてはいけない、とでも言いたげな調子で言った。
「いえ、咳の仕方を見ればわかります。これは胃液が上がってきたから、そういう咳になっているんです」
さらに、少し誇るでもなく、淡々と続けた。
「我々レベルになると、咳の音だけでわかるんです」
ハッと思わされた。目の前にいるのは、こちらが気づいていないものを一瞬で見抜くタイプの医者なのかもしれない、という気がしてくる。
問診票や検査結果より先に、ほんの短いやり取りや咳ひとつで、病気の輪郭をつかんでしまう。
そういう経験の積み重ねでしかたどり着けない名医の診察というものが、本当にあるのかもしれない。そんなふうに思えて来た。
翌日発熱したので別の病院で検査したら、インフルエンザB型だった。

日本語



















