うい retweetledi

VRChatの人間関係は、とにかくサイクルが速い。毎晩のように誰かと出会い仲良くなって、合わなくなったりアンフレして、また次へ。リアルじゃありえない速さで関係が回っていく。その中で別れや拒絶の数も増えるから、心をすり減らす人が多いのも本当だと思う。でも本当にそれだけなのかなと思って、関連しそうな研究をいくつか読んでみた。
まず、人と仲良くなるには思っているより時間がかかる。Hall(2019)の研究では、ただの知り合いから友人になるまでに約50時間、親友と呼べる関係になるには200時間以上の共有時間が必要だとされている。リアルだと友達と週に何時間も一緒にいるのは難しいけど、VRCなら毎晩何時間も、時には一晩中一緒にいられる事も珍しくない。リアルなら何年もかかる時間が、VRCだと数ヶ月で貯まるわけだから、仲が深まるのが速く感じるのは気のせいではなく単純に一緒にいる時間が貯まりやすいからだと言えるだろう。
しかもVRCでは、合わなければいつでもアンフレしたり、ワールドを移ればいいという気軽さがあって、これは所詮はバーチャル世界での関係だと希薄な行動に見えるけど、VRChatを調べたDeighan(2023)の研究だと、この「いつでも抜けられる」という安心感こそが、人が安心して弱さや本音を見せられる土台になっていると報告されている。いつでも切れるからこそ、深く入れる。希薄さと濃さは矛盾してるんじゃなくて、コインの裏表のような表裏一体を成しているわけだ。
ただ、サイクルが速いぶん、拒まれたり別れたりする回数もどうしても増えるから、拒絶に敏感な人ほど消耗して燃え尽きやすい、というのも複数の研究が示している(VRC民を直接調べたものではないから、あくまで近い話としてだけど)。だからVRCで病む人が多い事にも納得感がある。
で本題はここからで、Slotter(2010)という研究では、人は誰かと深く関わるとその相手を自分の一部として取り込んでいて、別れるとそのぶん「自分が何者か」が一時的に揺らぐ、ということがわかっている。そして著者たちは、このつらい揺らぎについて「これは回復に必要な、むしろ適応的な反応なのかもしれない」と、今後の研究課題として書いている。つまり誰かと別れて自分が分からなくなる感覚は、壊れてるんじゃなくて、自分を作り直してる最中なのかもしれない。
そう考えると、VRCで重ねた出会いと別れは、ただ消耗してるだけじゃない。誰かと関わるたびに、自分のコミュニケーションが他者にどう受け取られるかのフィードバックが貯まって、別れるたびに自分が少しずつ再編されていっている。その全部が、いつか本当に出会うべき人――伴侶や一生ものの真の友人に出会えたときに、ちゃんと向き合うための積み石になってる気がするんだよな。
VRCでふにゃったりエロがったり同性同士で愛を育むことが生産性のない無意味な行為だと揶揄する意見を時折耳にするが、そういった心と心のふれあいの本質は出会いと交流の経験の蓄積であって、それは言い換えると、誰かと会って、喋って、たまに傷ついて、それでもまた会いに行くこと自体が、無意味なわけがないと思うんだよね。
参考文献
Hall, J. A. (2019). How many hours does it take to make a friend? Journal of Social and Personal
Relationships, 36(4), 1278-1296. DOI: 10.1177/0265407518761225
Deighan, M. T., Ayobi, A., & O'Kane, A. A. (2023). Social Virtual Reality as a Mental Health Tool.
CHI 2023. DOI: 10.1145/3544548.3581103
Slotter, E. B., Gardner, W. L., & Finkel, E. J. (2010). Who Am I Without You? PSPB, 36(2), 147-160.
DOI: 10.1177/0146167209352250
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