
たみ | メンズナース🩺
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たみ | メンズナース🩺
@tami_maro
メンズナース歴28年 | 急性期病院の師長を経て、ベネケア訪問看護ステーションを立ち上げ | 誰もが「家でよかった」と言える支援を届けます✨ ナース募集中✨ 伊丹 | 尼崎 | 宝塚 | 川西市全域





「おばあちゃん、もう口から食べられないらしい。 病院から胃ろうという管で食事をとる方法のことを、言われたんだけど…」 父が困り果てた顔で ボクにたずねた。 ナースのボクは、病院でも 胃ろうの患者さんをお世話していて、 その方法が本当に良いのかは正直わからない。 胃ろうは、口から食事を摂ることが できなくなった人にとって、 胃に穴をあけたチューブから 栄養を補うための手段。 ボクがお世話した胃ろうの方は、 ほとんどが意識がない方だった。 患者さん自身が、 その決断をすることができないので 家族がその選択を迫られることになる。 ボクはその現実に、 ほんとにこれでいいのだろうかと いつもモヤモヤした感覚があった。 ボクの祖母は、戦後の混乱した時代を 生き抜いてきた人。 ボクが小さい頃から、農作業やミシンをしながら いつも笑顔でボクたちを支えてくれた。 よく山へ山菜を摘んでは 家族のために料理をしてくれて、 みんなの喜ぶ顔を生き甲斐にしているような人。 好き嫌いもなく何でも食べることに こだわっていた人だった。 そんな祖母も認知症を発症してからは、 少しづつ祖母らしさがなくなっていった。 そして、家で暮らすことが難しくなるほど 認知症が進んでしまった。 施設に入ることを余儀なくされ ほどなくして、 祖母は寝たきりになった。 口から食べられるチカラを失った祖母にとって、 ただ生きるためだけに 胃ろうで栄養をとる生活が、 本当に幸せなのだろうか。 父がボクに相談してきたのは、 そんな状況の中でのことだった。 「おばあちゃんに胃ろうを作ったほうがいいのか……お前はどう思う?」 ふたたび父親からたずねられた。 ボクは答えに悩んだ。 ナースとしての知識では、 胃ろうを作れば祖母の命は延びるだろう。 でもそれでどうなる? ボクは答えを見つけられないでいた。 「おばあちゃんは、どうしたいと思うかな……」 ボクは、ボソッとそう答えるのが精一杯だった。 父もまた、答えを出せずにいた。 ほかの親戚とも話しを重ね、母も、祖母の兄弟にも意見を求めた。 きっと、それぞれが祖母に対する思いがあったのだろう。 「何もしないということが可哀想…」 「なんとか食べることができないのか…」 「苦しくないようこのまま逝かせてあげたら…」 家族の中でも、悩み揺れ動く日々が続いた。 最終的に、息子である父親にその決断を 委ねられることになり 胃ろうは作らず、そのまま静かに祖母を見送ることにした。 でもこれは簡単な決断ではなかった。 胃ろうを作らず栄養を与えないということは、 祖母の命を縮めてしまう怖さがある。 家族の選択で、タヒを早めてしまい まわりから責められることがあるかもしれない。 本人の思いもわからない状態で、 人の命を決めなければならない 責任の重さを ボクはひしひしと感じていた。 ボクが今までお世話してきた患者さんの家族も、 なかなか決断できなかったことがあった。 きっと、ボクと同じ思いだったのかもしれない。 たとえ家族であっても、命を扱うことの責任の重さは 計り知れない。 ボクは祖母から身を持って思い知ることとなった。 数週間後、祖母は静かに息を引き取った。 苦しむ様子もなく、安らかな顔だった。 ボクたち家族の選択は、 ただ祖母が苦しまないように、 あの世に旅立ってほしかっただけ。 うちだけでなくきっと胃ろうの選択を迫られている 家族はどこも、 複雑な思いを抱えている。 家族の数のぶんだけ、その迷いがあるかもしれない。 @tami_maro












