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五六振武隊 陸軍少尉
上原良司
1922-1945
慶應義塾大学経済学部 出身
sp.nicovideo.jp/watch/sm3444094
栄光ある祖国日本の代表的攻撃隊ともいうべき陸軍特別攻撃隊に選ばれ身の光栄これに過ぐるものなきと痛感致しております。
思えば長き学生時代を通じて得た信念とも申すべき理論万能の道理から考えた場合、これはあるいは自由主義者といわれるかもしれませんが自由の勝利は明白な事だと思います。
人間の本性たる自由を滅す事は絶対に出来なく、たとえそれが抑えられているごとく見えても底においては常に闘いつつ最後には勝つという事は、かのイタリアのクローチェもいっているごとく真理であると思います。
権力主義全体主義の国家は一時的に隆盛であろうとも必ずや最後には敗れたる事は明白な事実です。
我々はその真理を今次世界大戦の枢軸国家において見る事ができると思います。
ファシズムのイタリアは如何、ナチズムのドイツまたすでに敗れ、今や権力主義国家は土台石の壊れた建築物のごとく次から次へと滅亡しつつあります。
真理の普遍さは今現実によって証明されつつ過去において歴史が示したごとく未来永久に自由の偉大さを証明していくと思われます。
自己の信念の正しかった事この事あるいは祖国にとって恐るべき事であるかも知れませんが吾人にとっては嬉しい限りです。
現在のいかなる闘争もその根底を為すものは必ず思想なりと思う次第です。
すでに思想によってその闘争の結果を明白に見る事が出来ると信じます。
愛する祖国日本をしてかつての大英帝国のごとき大帝国たらしめんとする私の野望はついに空しくなりました。
真に日本を愛する者をして立たしめたなら日本は現在のごとき状態にはあるいは追い込まれなかったと思います。
世界どこにおいても肩で風を切って歩く日本人、これが私の夢見た理想でした。
空の特攻隊のパイロットは一器械に過ぎぬと一友人がいった事も確かです。
操縦桿をとる器械、人格もなく感情もなくもちろん理性もなく、ただ敵の空母艦に向かって吸いつく磁石の中の鉄の一分子に過ぎぬものです。
理性をもって考えたなら実に考えられぬ事でしいて考うれば彼らがいうごとく自殺者とでもいいましょうか。
一器械である吾人は何もいう権利はありませんが
ただ願わくは愛する日本を偉大ならしめられん事を国民の方々にお願いするのみです。
こんな精神状態で征ったならもちろん死んでも何にもならないかも知れません。
ゆえに最初に述べたごとく特別攻撃隊に選ばれた事を光栄に思っている次第です。
飛行機に乗れば器械に過ぎぬのですけれど、一旦下りればやはり人間ですから、そこには感情もあり熱情も動きます。
愛する恋人に死なれたとき自分も一緒に精神的には死んでおりました。
天国に待ちある人、天国において彼女と会えると思うと死は天国に行く途中でしかありませんから何でもありません。
明日は出撃です。
過激にわたりもちろん発表すべき事ではありませんでしたが、偽らぬ心境は以上述べたごとくです。
何も系統立てず思ったまま雑然と並べた事を許して下さい。
明日は自由主義者が一人この世から去っていきます。
彼の後姿は淋しいですが、心中満足で一杯です。
いいたい事をいいたいだけいいました無礼をお許し下さい。
ではこの辺で。
出撃の前夜記す
昭和20年5月11日出撃戦死

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