
頑ツ@ek
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日本の漫画(海賊版含む)が各国の漫画産業に与えた影響、アメリカ編。 今回の連続投稿の最終章。長いんで心して読め。twitterでやる事じゃねぇ!! このポストはアメリカが漫画を自国で発明し、世界に輸出していた娯楽カテゴリで、70年かけて「消費するだけの国」になった、これがどう起きたのかを時系列で追う試みである。 まず1952年、アメリカで年間5億冊の漫画が売れていた。当時の米国人口1.5億、乳幼児と高齢者を除けばほぼ全員が日常的にコミックを読んでいた計算になる。主婦も、工場労働者も、兵士も、子供も、それぞれ違うジャンルを読んでいた。 2022年、アメリカの合法コミック市場は約22億ドル。数字だけなら過去最高水準。しかしその内訳を見ると、日本マンガが56%、米国産が3割、韓国Webtoonが成長中。 しかも、この市場規模は「氷山の一角」にすぎない。海賊版で読まれているコミックは、合法市場の数十倍。月間閲覧は数十億チャプター。そしてそこでの日本+韓国+中国のシェアは95%を超える。アメコミは1.5%程度に過ぎない。無料の海賊版ですらユーザーはアメコミを読んでいない。 一方で奇妙な事実がある。現在の米国書店で最も売れているコミックは、子供向けの「犬の警察官」シリーズ(Dog Man、累計1億5000万部)とRaina Telgemeierの自伝的作品群(累計2500万部)。この2人の作家が、Marvel+DCのスーパーヒーロー全タイトルを合わせたより多く売っている。児童分野では異常な成功、ティーン以降では完全敗北。この奇妙な並存は偶然ではない。 なぜ、このような消費構造になったのか、それを時系列を追って見て行こう。 1,アメリカ最初のスーパーヒーローブーム(1938~45) アメリカを代表するスーパーヒーロー、スーパーマン。彼が生まれたのは1938年でAction Comics#1に掲載された。この売り上げが良かった事からスーパーマンは翌年から単独タイトルに格上げされ、1941年には月間150万部を売り上げるようになる。 当然、模倣は爆発的に進んだ。Batman(1939)、Wonder Woman(1941)、Captain America(1941)はこの時期に誕生している。 この時期のアメコミの形態は以下のようなものになる。 価格:10セントで固定 ページ数:64ページ標準 フォーマット:アンソロジー型(1冊に複数のストーリーが同居) 読者:全年齢。 流通:新聞雑誌と同じ流通網 1944年にはキャプテン・アメリカも月間100万部を超えていた。だが不思議な事が起きる。 2,戦後の多ジャンル展開とアメコミ黄金期(1945~1953) WW2が終った後、不思議な事にスーパーヒーローコミックの売り上げが急落した。キャプテン・アメリカは刊行が打ち切られ、存続できたのはバットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンなど。他の多くのヒーローコミックが打ち切られた。 しかし、ここでアメコミは縮小しなかった。むしろ拡大した。 何故、拡大したのかというとジャンルを多様化させた為である。この時期のアメコミは現在と違い、ジャンルが非常に多様で、西部劇、Funny animals(ドナルド・ダックなどのディズニーの主要キャラ、トム&ジェリーetc)、ロマンス、犯罪物、ホラー、戦争劇、SFと多様なテーマを扱う刊行物が存在した。 ここで驚くべきはこの時期のアメコミにはロマンスがジャンルとして存在していたという事。このジャンルは現在のアメコミでは消えて漫画に取って代わられているが、初期は存在したのである。 1952年の単年総発行部数は推定5億冊と世界最大規模に到達していた。この時期のアメコミはほぼマスメディアと言っていい存在で、あらゆるアメリカ人がアメコミを読んでいた計算になる。 そしてこの流通を支えていたのが新聞の流通インフラであり、新聞が届く場所には一緒にアメコミが届くシステムだった。この時期のアメリカではあらゆる場所に新聞とアメコミは置かれており、それが常に新規読者を連れてくるというエコシステムが出来上がっていた。 そして、この時期の年間5億冊発行という規模をアメリカンコミックス産業は二度と取り戻すことが出来なかった。 この時期がアメコミの黄金期である。だが常にそうであるように黄金期はいつか終わる。そしてそれはたった一冊の本から始まった。 3,Comics Codeとアメコミの子供特化、TVの普及(1954~1970) きっかけはFredric Werthamの『Seduction of the Innocent』という一冊の本から始まった。彼はこの本で、「漫画は少年犯罪を誘発させる」「バットマンとロビンは同性愛関係」「スーパーヒーローはファシズム的」という主張を行った。 そしてこの本がベストセラーになった。 当時の少年はほぼ全員が漫画を読んでいた。アメコミの黄金期で年間5億冊発行されていた時代である。少年どころか大人もみんな読んでいた。少年犯罪者だって読んでいて当然だった。だが、そういった事は無視された。 そして全米での反漫画運動が広がった。書籍は焼かれ、複数の市では条例で漫画を禁止した。 こうした反漫画運動を受けて、アメリカの出版社が集まり、自主規制団体Comics Magazine Association of America(CMAA)が設立され、その規制機関としてComics Code Authority(CCA)を発足させた。 そして1954年、Comics Codeが発行された。以下の禁止事項。 犯罪の同情的描写 警察・裁判所・政府機関への不敬 ホラー、ゾンビ、吸血鬼、人狼 「horror」「terror」の題名使用禁止 過剰な暴力、詳細な武器使用 「Crime Does Not Pay」「Crime SuspenStories」のようなタイトル自体が違反 性的示唆(「seductive posture」を含む) 不倫、姦通 道徳的に善が悪に勝つこと(必須条項) 結婚の神聖性維持 そして、これらを満たした漫画のみがCCAの認証シールをつけられ、CCAの認証がついていない漫画は新聞雑誌流通業者が扱わない事が決定された。 結果として一年経たず、業界が激変した。 アメコミの主要出版社のうち、EC Comicsが撤退し、ジャンルとしてはロマンス、犯罪もの、戦争もの、ホラーが弱体化。ついでに半裸の女性を売りにしていた作家は淘汰されることになった。 結果としてアメコミは子供特化の作品群に集中せざるを得なくなった。 この時期、アメコミを苦境に追い込んだ衝撃がもう一つある。1957年のAmerican News Company崩壊で、ここで従来のアメコミの流通システムが崩壊。従来であれば30~60タイトルを発行できていたが、新しい流通システムでは8~12タイトルしか流通業者に引き取ってもらえなくなった。 この時期のアメコミは規制と流通網の崩壊で一気に部数を落とした。Marvel+DC合計部数は1957年141M→1958年115M(-18%)という単年最大の下落幅を記録。 さらに悪い事にこの時期、アメリカではTVが普及した事で娯楽が増えた。このTVが以前アメコミが満たしていたロマンス、犯罪、戦争といったジャンルの需要を代替えすることになる。 この下落する部数、TVという強力な競争相手に晒されたアメコミを救ったのが、Silver Ageだった。 Silver Age、またはマーベル革命とも言うが、1956年からDCはBarry Allenが新Flashを発表。DCはGreen Lantern(1959)、Hawkman(1961)、Atom(1961)と立て続けにスーパーヒーローを復活させた。 それに対抗する形でマーベルはFantasticFour(1961)、Hulk(1962)、SpaiderMan(1962)、Thor(1962)、Iron Man(1963)、X-Men(1963)、Avengers(1963)、Doctor Strange(1963)、Daredevil(1964)を立て続けに発表。 現代MCU映画の主要キャラはこの時期に制作された。これが大号令になり、アメコミはスーパーヒーローを復活させる戦略にシフトすることになる。 このシフトは成功した。部数は1968年にマーベル+DCで1.7億部まで回復し、ティーンから大学生まで読者として取り戻すことに成功した。この時期、業界全体での漫画売り上げは2億部。 しかし、1950年代の黄金期はDell/Archie/Gold Key含めた業界総計が5億部。 絶対値で見れば、業界全体は1952年ピークの半分以下に縮小したままだった。 この数字は当時の人口動態を見れば、さらに悪い事が明らかになる。1955-1965年の10年間、子供の人口は50%増加した。所謂ベビーブーマー世代だ。子供が増えれば需要も増える。本来なら1950年代の黄金期の5億部を超えていてもおかしくなかった。 にも関わらず、そうならなかった。理由は以下になる。 まずコード後に単純にジャンルが消失した。女性が読む漫画がなくなった。これだけで半分の読者は減る計算だった。ロマンスは手放すべきではなかった。ティーン向け、大人向けのジャンルも消失していた。 次に価格ショック。アメコミは一冊あたり10セントを維持し続けた。維持する代わりにページ数を削った。価格を据え置いて、ページ数は64が52になり、48になり、36になり、最後に32になった。これが限界に達したのが1961年、ついにページ数削減が限界に達した。1962年、1965年と段階的に値上げし、一冊15セントまで値上がりした。これは一冊あたりのページ単価が3倍になった事を意味する。当然、読者離れを招いた。 さらにアメコミが捨てたジャンルの穴を埋めるように他のTVドラマ、アニメ、雑誌が台頭し、そこに流通網の減少も加わった。かつては新聞雑誌を売っていたドラッグストア、キャンティストアが潰れ、スーパーマーケット、チェーンストアに置きかわった。 つまり、アメコミは本来存在していたはずの需要を取り込めなかった。子供の純増によってこうした問題は覆い隠され、スーパーヒーローコミックの成功が業界の危機感を醸造しきれなかった。 対照的なのが日本の漫画業界である。日本は戦後のベビーブーム期に子供が純増したが、その子供が大きくなるにつれて年代別の受け皿漫画雑誌を充実させた。少年コミック、少女コミック、青年コミック、レディースと広く展開し、ジャンルを拡大させて需要を全て取り込んだ。 スーパーヒーローにリソースを集中させたアメコミ、ジャンル横断であらゆる年齢層向けの漫画提供に切り替えた日本、この事が日本とアメリカのコミックのその後の命運をわけることになる。 ここは決定的な転機であり、覚えておいて欲しい。 4,Direct Market化とコレクター専用産業への変質(1970~1990) この時期の特徴はアメコミが子供の読みものから大人のコレクターズアイテムに変容した時期となる。 まず最初にこの時期のアメリカは強烈なインフレに襲われていた。それはコミック産業も同じだった。1971年、郵政料金の大幅引き上げ、 用紙価格の上昇。 結果、アメコミの値段は1974年の25セントから1990年には1~1.5ドルまで値上がりした。10年で3~4倍。ページ数は36ページ。もはやアメコミは子供が気軽に変える価格帯を超えてしまった。ページ数削減と合わせるとページ単価は悪化する一方だった。 そして従来の新聞雑誌流通網が崩壊していたので、アメコミは新聞雑誌の流通網から離れ、コミック専門店に直接漫画を売り渡す方式に切り替える決断がなされた。これがDirect Market化。 専門店数は1980年代を通じて増加し、1979年の1500店舗から1990年には10000店舗まで拡大。 そしてこの帰結がコミックスコードの無効化を生んだ。そもそも新聞雑誌の流通網に乗せる為のコミックスコードである。その流通網にのせず、専門店に直接販売するならコミックスコードを守る必要がない。 結果として専門店ではコミックスコードのない漫画が増加し、実験的な作品が増えた時期でもある。しかし、ここが重要なのだが、ジャンルの多様性は帰ってこなかった。 かわりにアメコミが進んだ方向が「大人向け芸術作品」というジャンルである。 1986年Watchmen、Batman: The Dark Knight Returns、Maus Vol. 1の三作品が発表され、この作品群によってアメコミには芸術とされる批評要素が加わった。 これらには当時のアメコミの読者層が深く関係している。というのも、 1970年代:10代前半中心、平均読者年齢13歳前後 1980年代:10代後半〜20代中心、平均読者年齢20歳前後 1990年代:20代〜30代中心、平均読者年齢25歳以上 といった形で平均読者が上がるにつれて、その求めるコンテンツは変わっていく。それに無理やりスーパーヒーローというジャンルで対応した。そして平均年齢層があがるにつれて購買力もあがるのでプレミアム価格を乗せて販売することが可能になった。 これがアメコミの高価格化を可能にした要因だった。 しかし、ここには隠れた問題があった。まず価格上昇で児童層に対する導線をアメコミは失った。次に新規読者の導線であったニューズスタンドでの購入という形態が無くなっていた。さらに女性読者向けの作品は完全に市場から消失した。 また日本との比較になってしまうが、児童向け、少女向けといった子供の導線ジャンルを常に保った日本とは構造的に異なる。 新規読者の流入経路をアメコミは物理的、価格的、コンテンツ的にこの時期に失った。ここまででアメコミ敗北の基礎インフラはほぼ整っていた。あとはそれがどう、いつ爆発するのか、というだけだった。 一方でアメコミは大人のコレクターズアイテムという下地は整った。そしてこれが次のアメコミ投機バブルに繋がっていく。 5、投機バブル、Marvel破産、Diamond独占(1990~2010) 始まりはRon PerelmanがマーベルをLBOで82.5Mドルで買収したのが始まりだった。 これによってマーベルは莫大な借金を背負い、それをキャッシュフローで返済することを余儀なくされた。これがアメコミバブルへの始まりとなる。 まず、当時すでにアメコミがコレクターズアイテム化していた。特に♯1は市場で高値で取引されていた。これは先にも述べたがアメコミの読者層が高齢化し、可処分所得が増えていたからだ。 これに目をつけたPerelmanは大量に新シリーズを発表させた。新シリーズの#1号はコレクター価値が高い。だからこの新シリーズの#1号は爆発的に売れた。コレクターはこれを複数買って保存するようになった。 つまる所、この時期のアメコミは「読む為に買う」のでなく「買って保存して価値が上がってから売る」為に大量購入されていた。 要は非コミックファンが投機のために大量にアメコミを買うようになったのである。 1993年の業界総売上は1億冊を超え、一時的にではあるが売り上げは回復した、ように見えた。 そんな中、1994年Heroes World事件がおきる。 ここでマーベルは突如、自社の漫画を独占的に自社の流通(Heroes World)のみでしか扱わないという宣言をしたのである。これに反発した他のアメコミ出版社はDiamond Comic Distributorsと排他契約を結んで集結。 これがHeroes World事件で、最終的に業界のコミック配達はDiamond一社に独占される形で決着する事になる。 ここからマーベルは坂道を転げ落ちて行く。 まずアメコミの投機バブルが崩壊した。アメコミを買ったコレクターは♯1号がいつまでたっても値上がりしない事にきづいた。そして買うのをやめた。1996年にはマーベルの売り上げは50%減少した。 当然、それはマーベルの財務状態を直撃した。債務の返済にあてるキャッシュフローを確保できないからだ。そしてマーベルはChapter11を申請し、マーベルは破産した。 さらに悪い状況に陥ったのがコミック専門店だった。Diamond独占化では専門店は2~3か月先の需要を予測して漫画を注文しなければならなかった。そして漫画は小売店が買い切り。在庫リスクは小売店が全て抱える事を余儀なくされた。 結果がコミック専門店の減少である。1993年ピーク時の約10000軒が1996年に約4000軒まで減少、2000年代後半に約3000軒まで減り、マーベルの失敗が業界全体の流通網の破壊という現象まで引き起こしたのである。 マーベル自体はその後、Isaac Perlmutterの元で再建され、キャラクターIPの映画化と言う形で再生することになる。ただ、その話をすると長くなりすぎるので割愛。 一方で、この時期から外部に新市場(児童GN、マンガ)が形成された事は特筆に値する現象だった。漫画は主に米国大手書店チェーンで新しい流通網が形成され、児童GNは書店・学校チャネルでの販売方法が確立されていった。 アメコミが自爆する中で、次の時代のメディア、新しい流通網が生まれていた。 6、児童グラフィックノベル、マンガの躍進、Webtoon登場(2010~2020) まずこの時期のアメリカのDC+マーベルの年間売上は約400Mドルまで落ちていた。内容はほぼスーパーヒーロー。この時期、MCU映画(Iron Man2008、Thor2011、Captain America2011、Avengers2012)が大ヒットしているのだが、それがアメコミの売り上げ増加に繋がらないという構造的な問題が明らかになりつつあった。 その一方で爆発的に成功したのが児童向けグラフィックノベルである。 Raina Telgemeierは2010年に自伝的グラフィックノベル『Smile』をScholastic Graphixから出版。そこから次々と児童向けグラフィックノベルを出版し、2019年時点でTelgemeierは累計1800万部のモンスター作家に成長する。 Dav Pilkeyはそれからちょっと遅れて2016年からグラフィックノベルのDog Manシリーズを開始。2024年時点でDog Manシリーズ累計1億5000万部超を売り上げる。 この期間、この二人だけでアメコミを凌駕する漫画を売った形になる。当然、市場は急拡大し、2010年児童GN市場約200Mドルから2022年約700Mドルまで3倍超までになった。 一方で日本の漫画はまだこの時期は爆発的成長をみせていない。一定の規模はあったが、売り上げは横ばいだった。 マンガ市場の爆発の最大の前提条件は、アニメストリーミングサービスの浸透だった。Crunchyrollは最初は違法配信サイトとして始まったが、2013年にアメリカで公式サービス化。Netfrixもアニメに参入し、そこに莫大な予算を投じ始めた。 これが潜在的な漫画需要を形成した。つまり、アニメストリーミングサービスは日本の漫画にそれまで無かった導線を供給したのである。アニメを見た層が漫画に流入する導線が形成された。つまりGenZへの導線だ。 2010年代のもう一つの決定的な新展開がWebtoonの米国進出であり、ここの層が非常に重要だった。というのもアメリカのWebtoonの読者層の60~70%が18~24歳の女性であり、明らかに漫画、アメコミとは違う読者層を取り込み始めたからだ。 スマホで読む、というGenZのニーズに合わせた縦読みフルカラーは市場を侵食しはじめていた。 GenZの米国人口約6800万人。ここのパイの奪い合いが始まろうとしていた。 7、可視化された敗北。COVID以降と長期軌道の確定(2020~2025) 2020年3月23日、Diamondは全流通の停止を発表した。COVIDパンデミックによる配送網の混乱が理由だった。 この前代未聞の事態に陥ったアメコミ各社は次々とDiamondとの契約を破棄、Diamondによる流通独占は遂に終わりを告げる。 そして、パンデミックによるアメコミの流通の混乱に乗じて漫画市場が爆発した。 米マンガ市場売上 2019年:約$125M 2020年:約$250M(+100%) 2021年:約$780M(+212%) 2022年:約$1.2B(+54%) 二年半で10倍という異常な需要拡大がおきた。ここまで経済危機と流通網の混乱を契機にして日本の漫画が侵食するケースを何度も扱ってきたが、北米でもそれが起きた。しかもたった二年半という短い期間で。 これは先に述べたアニメストリーミングサービスの拡大と並行して起こった現象である。 しかもこの時期、北米では漫画の印刷が間に合わず、品切れが続出し、供給が需要を満たせなかった。 そして、当然ながら読者は海賊版に流れ込んだ。 この海賊版のページビューは残酷な事実を可視化している。 MangaDexは月間ページビュー3億。 合法米マンガ市場 1.2Bドルvs海賊版サイト流通量(ページビュー換算) 月間数十億chapter。 合法:海賊版 = 1 : 45。 出版社は認めないが、海賊版サイトはどのコンテンツが次に売れるかの先行指標となっている。膨大な読者層による選別の結果だからだ。 そして海賊版市場のコンテンツ構成。 日本マンガ:60-65%(2018-20年は80~85%だったがシェア低下) 韓国 Webtoon(manhwa):25~30%(急成長) 中国 manhua:5~10% 米国アメコミ:1~2% BD(フランス語圏):0.5%未満 この数字が米欧コミック産業の長期的敗北を最も純粋に可視化する。無料であってもGenZはアメコミとBDを読んでいない。95%が東アジア産のコンテンツを読んでいる。 そしてもう一つ、GenZは縦読みフルカラーのWebtoonに流れている。日本漫画のシェアは落ちており、韓国と中国の縦読みフルカラー方式がシェアを拡大させている。GenZの傾向として、これは定着する可能性が高い。スマホネイティブな世代はそれに最適化されたフォーマット、フルカラー化を求めている。 一方で児童GN市場はPilkeyとTelgemeierによる継続的支配が続いている。 つまり、北米の8〜12歳の市場は児童GN、13~24歳の市場は漫画、webtoon、manhuaに支配されているという事である。 そしてこの層は明らかにアメコミを読んでいない。児童GNで育った層が漫画、webtoon、manhuaに流れる経路が可視化されており、これは世代的な断絶を意味している。 アメコミは1950年には年間5億冊を売っていた。2020年には0.5億冊になった。そして将来的な読者を現在進行形で失っている。将来的な読者を失えば、その産業は縮小均衡を余儀なくされる。 70年のアメコミ産業史を追ってきた結論としてはこうだ。 「米国コミック産業は、自身の産業構造の選択と経路依存により、マスメディアから縮小均衡のニッチ文化産業に変質した」 以上です!!お読みいただき有難うございました!!










































