
AIを使う科学者は、そうでない人より論文を3倍書き、引用は4.8倍される。 それは本当のことです。 でも、4130万本の論文を分析したNature誌の研究が明らかにしたのは、その「裏側」でした。 AIを使う研究者が増えるほど、科学全体が扱うテーマの幅は4.63%縮んでいく。 研究者同士が互いの成果に反応し、知識を発展させていく連鎖も22%減っている。 AIは「データが豊富な領域」で圧倒的に力を発揮します。 だから研究者は、AIが得意な土俵に引き寄せられていく。 タンパク質の構造予測、材料探索、医療画像解析——成果が出やすく、論文も引用もされやすい。 問題は、そこから外れた領域が静かに放置されていくことです。 まだ誰も手をつけていない問いへの好奇心。 異なる専門家が偶然ぶつかることで生まれる発見。 データが少ない分野で粘り強く積み上げる研究。 そういうものが減っている。 これは研究者の怠慢ではなく、インセンティブの問題です。 AIを使えばキャリアが有利になる設計になっているのだから、個人が最適行動をとった結果として、集団では多様性が失われていく。 SNSのアルゴリズムが個人の「いいね」を最大化しながら、社会全体の意見の多様性を失わせていくのと、同じ仕組みです。 「AIがあれば科学は加速する」は間違いではありません。 ただそれは、すでに走っているレールの上でだけ、という条件付きかもしれない。 次の100年の科学を変える発見が、今この瞬間、誰にも気づかれずに芽を摘まれているとしたら——そのコストをどう評価しますか。

















