
CPTSDとは、「未来が壊れていく病」である。 複雑性PTSDの説明として、フラッシュバック、過覚醒、解離、不眠などが語られることは多い。 しかし、本当に深刻なのは、症状そのものではない。 本質は、“未来予測の破壊”にある。 人は本来、 「努力すれば変わるかもしれない」 「相談すれば誰かが応答してくれるかもしれない」 という感覚を持ちながら生きている。この“未来への期待”は、単なる気分ではなく、生きるための神経システムそのものだ。 だが、長期的なハラスメント、虐待、無視、制度的不作為、医療無効化などを繰り返し経験すると、その予測は少しずつ壊れていく。 「助けを求めても応答がない」 「声を上げても無視される」 「努力しても状況が改善しない」 こうした経験が蓄積されることで、脳の報酬予測システムは、“未来に価値が存在しない”と学習していく。 すると、人は落ち込むだけではなく ・動けなくなる ・喜びを感じにくくなる ・人を信じられなくなる ・未来を想像できなくなる これは怠けでも甘えでもない。神経系が「もう期待しない方が安全だ」と判断している状態である。だから、CPTSDの回復には、考え方を変えるといった表面的なアプローチでは足りない。 必要なのは、“未来への小さな報酬予測”を再び取り戻していくことだ。 ・安心できる対話 ・小さな成功体験 ・否定されない関係性 ・身体感覚としての安全 ・「やっても無駄ではなかった」という経験 そうしたものが少しずつ積み重なることで、人の神経系は再び、「未来は閉じていないかもしれない」と学び直していく。 CPTSDとは、単なる恐怖記憶の障害ではない。 それは、“生きる方向そのものが閉ざされていく病”なのである。


























